札幌市白石区のMFクラウド会計・弥生会計が得意な千葉税理士事務所です。
法人成りという言葉を聞いたことがありますか?専門書などでは、当たり前に法人成りという言葉が使われています。ただ、法人成りという言葉が何を意味しているかをしっかりと理解していきましょう!
個人事業を会社設立で法人化【法人成りと個人事業の税金の違いとは】
法人成りとは個人事業を法人化することをいいます。
つまり、サラリーマンを経て、法人をつくる場合には「法人成り」とはいいません。
これは創業や開業・法人設立をするということです。
法人成りはあくまでも個人事業をしている人が、その事業を株式会社や合同会社を作って、その事業を法人に変更することをいいます。
今回の法人成りを検討する人は、今は個人事業をしている人を対象として説明していきます。
個人事業のままで行くのか、法人にするのかで悩むことが非常に多いのです。
【個人と法人の税金がかかるの対象の違いとは】
◆所得税の所得の特徴とは?
所得税は、個人を対象に税金をかけていきます。
そのため、所得税ではその人の個人的事情を勘案して税金を軽減していきます。
所得の種類を10種類に区分して、所得の特性を考慮に入れた計算方法でそれぞれの所得を計算します。
これを合算してから、家族の人数や医療費のかかりなどを考慮に入れた所得控除を引いて所得を計算します。
◆法人税の所得の特徴とは?
法人税は、すべての益金から損金を引いたものを対象に税金をかけて計算していきます。
簡単にいうと、会社の儲けから会社のコストなどを引いて税金をかけるという仕組みになっています。
株式会社や合同会社などの一般の法人は基本的に「儲け」を追求する営利法人とされています。
そのため、それぞれの事情などを細かく考慮に入れて所得を変えることがありません。
所得税のように個人的な事情による税金の軽減など配慮が必要が少ない税務なのです。
例外として公益法人などについては、別途規定を設けて所得の計算を軽減しています。
個人の所得税の税率と法人の法人税の税率の違い
所得税の税率は、たくさん稼いだひとが税金を多く負担するように超過累進税率という税率が適用されています。
(所得税の税率)195万円以下の部分・・・・5%
195万円超330万円以下・・・・10%
330万円超695万円以下・・・・20%
695万円超900万円以下・・・23%
900万円超1,800万円以下・・・33%
1,800万円超4,000万円以下・・・・40%
4,000万円超・・・・45%
法人税の税率
法人税の場合は、資本金の額・所得金額によって税率が異なります。
所得税と違い、所得が多くなるほど高くなる段階がたくさんあるわけではありません。
このことから、法人税は定率課税といわれています。
(平成28年度)
法人税の税率は基本税率・・・23.9%
中小法人の軽減税率(本則)年800万円以下の部分・・・19%
中小法人の軽減税率(特例)年800万円以下の部分・・・15%
【法人税の基本税率の変遷】
平成11年 基本法人税率・・・30%
平成24年 基本法人税率・・・25.5%
キーワード 中小法人とは?
中小法人とは、次の法人のことをいいます。
① 普通法人のうち、資本金の額・出資金の額が1億円以下の法人(大法人に完全支配されている法人など一定の法人を除く)
② 公益法人等又は協同組合等
③ 人格のない社団等
社長へのお給料の取り扱い【個人事業主と法人経営者の違い】
◆個人事業主の自分への給料の場合【個人の税務】
個人事業主の場合、自分へのお給料を出していても経費になりません。
生活費として月20万円をとっていても、年収240万円ということにはなりません。
自分へのお給料が経費にならないということは次のようになります。
売上 年間1,000万円
経費 年間 300万円
自分へのお給料(生活費) 年間 240万円(経費にできません)
差引金額 460万円
確定申告でよくある間違いポイント!
自分への給料を引いて事業の利益を460万円として申告した。後日の税務調査で修正申告をすることになり余計な税金を支払った。
【正しい計算】
売上 年間1,000万円
経費 年間 300万円
差引金額 700万円(事業による利益)
自分への生活費が経費にならないので、これを考慮に入れて利益をコントロールすことがポイントになります。
◆法人税の社長へのお給料(役員報酬)の場合【法人の税務】
役員に対する定期同額給与・事前確定届出給与・利益連動給与は損金(法人税法上の経費)になります。
これに該当しない社長へのお給料は経費になりません。
法人設立時に気になる役員報酬の決め方については「役員報酬ってみんなどう決めているの?」をご覧ください。
身内に対するお給料の違い(奥様・両親・お子様など)
◆所得税(個人事業)の場合の親族への給料【個人の税務】
個人事業の場合、原則として、生計一親族への給料は経費になりません。
所得税は身内に対するお給料を経費にするためには、事前に届出が必要だったりします。
「必要だったり」ってどういうこと?と感じると思います。
青色申告と白色申告で手続きと経費になる金額が異なるのでご注意ください。
青色申告の場合は、提出期限までに青色事業専従者給与に関する届出書という書類を税務署に提出していなけれ経費になりません。
白色申告の場合は、払ったお給料そのものは経費にならずに、一定の計算をした金額を経費に入れることになります。
これを事業専従者控除といいます。配偶者の場合でも、最大86万円・その他の親族の場合で1人あたり最大50万円です。
◆法人税の場合の親族への給料【法人の税務】
法人税の場合は、かなり複雑なことになります。
法人税法の役員の定義は登記されていることだけではないので、詳しくは【法人決算申告対策 その2~法人税法上の役員とは~】をご覧下さい。
親族が役員として登記されている場合やみなし役員に該当している場合は、「法人税の社長へのお給料(役員報酬)の場合」と同じ取り扱いになります。
親族が一般の従業員と同じ場合は、普通にお給料として経費(損金)になります。
【社長や親族への退職金について】
所得税の社長(個人事業主)・親族(家族)への退職金の場合【個人の税務】
所得税では、個人事業主である社長への退職金は経費になりません。
何年頑張っても、何十年頑張っても退職金が経費にならないのです。
生計一親族に対する退職金も個人事業主と同じように退職金は経費になりませんのでご注意ください。
法人税法の社長(役員)・親族(家族)への退職金の場合【法人の税務】
過大でない限りは、退職金は法人の経費(損金)になります。
所得税の場合は、社長や生計一親族への退職金は経費にならないので、この差は大きいポイントになります。
もらった社長(役員)・親族の方は、所得税・住民税が退職所得として課税されていきます。
◆注意点
退職金をもらった場合、所得税は通常の所得よりも税金が少なくなる計算方法が適用されます。
しかし、役員としての勤続年数が5年以下の場合、役員部分の退職所得だけ1/2の軽減計算が適用されません。
【通常の退職所得】
(退職金-退職所得控除額)×1/2=退職所得
【役員の勤続期間が5年以下の部分】
(退職金-特定役員等勤続年数)=退職所得 ※1/2の軽減措置がないので、税金が高くなります。
特定役員とは、役員等の勤続年数が5年以下である者のことをいいます。
まとめ
〇税率について(所得税率・法人税率)
個人事業の場合、個人所得が高くなればなるほど税率が高くなる超過累進税率
法人は原則として一定の税率による定率課税
〇社長へのお給料について
個人事業の場合、社長(個人事業主自信)は自分への給料は経費にならない
法人は役員への給与は要件を満たすと経費(損金)になる
〇家族への給料について
個人事業の場合、生計一親族の給料は、原則として経費にならない。一定の届出をすることで経費になる。
法人の場合、家族への給料も一定の要件を満たすと経費にすることができる
〇社長や親族への退職金について
個人事業の場合、社長(個人事業主自身)自信への退職金や生計一親族への退職金は経費にならない。
法人の場合、社長や親族への退職金も一定の要件を満たすと経費にできる
個人事業と法人のメリット・デメリットは慎重に判断していかなければいけないポイントがあります。
まずは、個人事業と法人の違いをしっかりと理解して行きましょう。
もしも、個人事業と法人比較で悩んだら税理士事務所に相談してみましょう!
千葉税理士事務所でも、積極的に法人成りのご相談を承っております。