「先生、もう手遅れですか?」
30年信頼した税理士と、失われた10年
「事業承継は、時間をかければかけるほど、税金が安くなります」
長年連れ添った顧問税理士のその言葉を信じた社長。
しかし、本当に時間は、彼の味方だったのでしょうか。

物語:『30年付き合った顧問税理士が、会社を“安楽死”させた日』
1. 発端:友人の成功と、自身の焦り
懇親会で、旧友の横山社長から「経営承継専門の税理士と5年がかりで、理念の承継まで完璧に終えた」という話を聞き、鈴木社長は強烈な焦燥感に駆られる。自分の顧問である佐藤先生とは、そんな「経営」の話はしたことがない。「うちは、何年遅れているんだ…?」
2. 最初の相談:先延ばしの提案
翌日、鈴木社長は佐藤先生に「うちもすぐに取り掛かろう!」と詰め寄る。その必死な様子に、佐藤先生は無意識に身構えた。彼は自分の得意な「税務」に話を引き戻し、「社長、焦ることはありません。時間をかけて暦年贈与を続ければ、税金はほとんどかからなくなります。時間は、我々の味方ですから」と提案。鈴木社長は、その言葉を信じてしまう。

3. 実行:失われた10年
そこからの10年間、「事業承継対策」とは名ばかりの、機械的な贈与だけが淡々と続いた。経営の承継に関する具体的な話は、すべて「まずは税金の問題を片付けてから」という言葉で先送りにされた。鈴木社長は目の前の節税額に満足し、会社が静かに活力を失っていく本質的な問題から目をそらし続けた。
4. 突然の“その日”と、準備なき後継者
鈴木社長が78歳になった冬、心筋梗塞で倒れ、経営の第一線から退かざるを得なくなる。「味方」だと思っていた時間は、一瞬で底をついた。しかし、後を継いだ息子は、社長の仕事を何も知らなかった。主要な取引先への見積もりの出し方、新規の仕事の取り方、金融機関との交渉術など、何一つ引き継がれていなかったのだ。

5. 結末:”安楽死”すら許されない、税制の檻
会社の経営は急速に悪化。資金繰りは逼迫し、将来を悲観した優秀な社員も会社を去っていった。万策尽きた息子は「もう会社をたたもう」と父に告げる。その時、鈴木社長は本当の恐怖を知る。彼らが使っていた事業承継税制は、税金が「免除」されたのではなく、「猶予」されているに過ぎなかったのだ。もし今、会社を辞めてしまえば、猶予されていた莫大な贈与税の支払いが、利子税と共に一括で発生する。事業を続ければ赤字地獄、辞めれば税金地獄。彼らには“安楽死”すら許されていなかった。追い打ちをかけるように、頼りの佐藤先生も高齢を理由に廃業。30年間信頼したパートナーと、味方だと信じた時間が、会社と家族の全てを、出口のない檻の中に閉じ込めてしまった。
なぜ、この“完璧な”承継は失敗したのか
この悲劇の根源は、社長と税理士が、目先の**「税務リスク」**を恐れるあまり、より巨大で、より致命的な**「経営リスク」**と**「時間リスク」**から目をそらし続けたことにあります。
事業承継は、税金対策ではありません。会社の未来を創る、長期的な経営活動そのものです。「何もしない」「先延ばしにする」ことは、決して安全策ではなく、最も確実性の高い、静かな自殺行為なのです。
あなたの会社の物語を、悲劇にしないために
では、鈴木社長はどうすれば、会社の魂と未来を守ることができたのでしょうか。
「財産」だけでなく「経営の魂」を承継するとは、具体的にどういうことなのか。
その答えの一端を、私たちが最も大切にしている理念をまとめた、こちらのページでご確認ください。 なぜ私たちが「魂の承継」にこだわるのか、その理由がここにあります。