なぜ、"社員を気持ちよく送り出す"会社ほど、成長し続けるのか? - 退職を"最強の資産"に変える、新時代の人事戦略

🗓️ 2025年10月31日 👨‍💼 千葉将志税理士事務所代表 千葉将志

なぜ、"社員を気持ちよく送り出す"会社ほど、成長し続けるのか? - 退職を"最強の資産"に変える、新時代の人事戦略

難易度
★★★★★
読了目安
約14分

この記事から得られる3つの効果

  • 優秀な社員の退職を、会社の"失敗"ではなく"成功の証"と捉え直す視点が手に入ります。
  • 辞めた社員が、未来の**顧客やビジネスパートナーになる「アルムナイ戦略」**を学べます。
  • 結果として、残った社員のエンゲージメントと定着率が向上するという逆説的な真実を理解できます。

金曜の午後。社長室のドアが、静かにノックされる。入ってきたのは、あなたが最も期待をかけていた、エース社員。その手には、見慣れない一通の封筒が。

「一身上の都合で…」

その言葉を聞いた瞬間、あなたの頭の中を、様々な感情が駆け巡ったはずです。「なぜだ?」「何が不満だったんだ?」「あれだけ投資したのに、裏切りじゃないか…」。驚き、失望、そして怒り。その感情は、経営者として、あまりにも自然なものです。

社員の退職、特に優秀な社員のそれは、会社にとって紛れもない「損失」であり、経営者にとっては「失敗」の烙印のように感じられるかもしれません。

しかし、もし、その常識が、あなたの会社の成長を妨げている、最大の"思い込み"だとしたら?もし、その「損失」を、他の何にも代えがたい「最強の資産」に変える方法があるとしたら…?

この記事は、社員の退職という避けられない現実を、会社の未来を照らす力へと転換するための、新時代の人事戦略についてお話しします。

1. なぜ、"辞めさせない会社"は、三流なのか?

「社員の定着率が高い」ことは、素晴らしいことです。しかし、それが「辞めたいのに、辞められない」という状況だとしたら、話は全く別です。

終身雇用が崩壊した現代において、優秀で、向上心の高い人材ほど、自らのキャリアを一つの会社に限定しません。彼らは、成長の機会を求めて、常に次のステージを探しています。この流れに逆らい、彼らを無理に引き止めようとすることは、3つの悲劇を生みます。

"引き止め"がもたらす3つの悲劇

  • 悲劇① モチベーションの死:本当は辞めたい社員が会社に残っても、そのパフォーマンスが上がることは決してありません。彼らは静かに"死んだ魚の目"になり、組織全体の士気を蝕みます。
  • 悲劇② 成長の停止:新しい血が入らない組織は、水が流れ込まない池のように、やがて淀み、腐敗します。会社の成長は、健全な人材の流動性によってもたらされるのです。
  • 悲劇③ 評判の悪化:「あの会社は、辞めさせてくれないらしい」という評判は、今の時代、SNSであっという間に拡散します。それは、未来の優秀な人材が、あなたの会社を応募先の選択肢から外す、致命的な理由となります。

一流の経営者は知っています。社員は「所有」するものではなく、「預かる」ものであることを。そして、彼らが次のステージへ旅立つ時、それを温かく送り出すことこそが、経営者の最後の、そして最も重要な仕事であることを。


2. 退職を"資産"に変える「アルムナイ・マーケティング」という発想

では、退職をポジティブな力に変えるには、どうすればいいのか。その答えが、**「アルムナイ(卒業生)」**という発想です。

あなたの会社で育ち、卒業していった元社員は、失われた労働力ではありません。彼らは、あなたの会社の文化と価値を深く理解する、**社外に存在する、最も強力な"応援団"**なのです。この応援団との関係を意図的に築き、維持していく活動こそが**「アルムナイ・マーケティング」**です。

"卒業生"がもたらす3つの未来の資産

  • 未来の「顧客・パートナー」になる:あなたの会社を卒業し、別の会社で要職に就いた彼らは、将来、最高の顧客や、最も信頼できるビジネスパートナーになる可能性があります。
  • 未来の「採用チャネル」になる:「あの会社は、本当に良い会社だった」という卒業生のポジティブな口コミは、どんな求人広告よりも雄弁に、新たな優秀な人材を惹きつけます。
  • 未来の「再入社(ブーメラン)」候補になる:外の世界で新たなスキルを身につけた彼らが、数年後、あなたの会社に即戦力として戻ってくる「ブーメラン採用」は、欧米の先進企業では常識です。

3. "最高の卒業式"を演出するための3つのステップ

この「アルムナイ」という資産を築くために、社員が退職を告げた瞬間から、あなたの"演出"は始まります。

ステップ①:「祝福」の言葉を贈る

退職の報告を受けたら、最初に言うべき言葉は「なぜだ?」ではありません。「おめでとう。君の新しい挑戦を、心から応援する」です。寂しい気持ちをぐっとこらえ、彼/彼女の未来を祝福する姿勢を見せること。この最初の対応が、未来の関係性を決定づけます。

ステップ②:「感謝」の場を設ける

最終出社日には、単なる事務的な手続きで終わらせてはいけません。朝礼や終礼の場で、社長であるあなた自身が、全社員の前で、彼のこれまでの貢献に対する具体的な感謝の言葉を伝えるのです。「彼のあの仕事が、今の我々を支えている」。この"卒業式"は、去る者だけでなく、残る社員の心にも深く刻まれます。

ステップ③:「繋がり」の糸を結ぶ

「会社を辞めたら、もう関係ない」ではありません。「君は、これからは社外の、大切なパートナーだ。いつでも遊びに来い」と伝え、FacebookなどのSNSで繋がり、定期的に会社の近況を伝えるニュースレターを送るなど、卒業生との繋がりを維持する仕組みを創るのです。

4. あなたは、才能が集まる"港"の主になる【決断の時】

あなたの会社は、社員を閉じ込める**「城」**であるべきではありません。世界中から才能ある船(人材)が集まり、ここで最高のスキルと経験を積み、そして新たな冒険へと旅立っていく。そして、その船が持ち帰る富や情報が、港をさらに豊かにしていく。あなたの会社は、そんな**「開かれた港」**であるべきです。

港の主であるあなたの仕事は、船を鎖で繋ぎ止めることではありません。最高の船を育て、その新たな船出を、誰よりも誇らしく思い、盛大に見送ることです。

道A:『閉ざされた城』の城主

社員の流出を恐れ、引き止めに奔走する道。組織は停滞し、優秀な人材からは敬遠され、あなたは常に裏切りの恐怖に怯え続けるだろう。

道B:『開かれた港』の主(あるじ)

社員の卒業を祝福し、最強の応援団として送り出す道。あなたの会社は、内外に広がる人的ネットワークの中心となり、新たな才能と機会が、絶えず引き寄せられるだろう。

あなたの魂は、どちらの未来を渇望していますか?

もし、あなたが後者の『開かれた港』の主としての未来を選ぶと、今、決断されたのなら。その最初の、そして最も重要な一歩は、あなたの会社の「人事」を、単なる労務管理から、会社の未来を創る「戦略」へと、共に引き上げるパートナーとの対話です。

あなたの会社を「才能が集まる港」にしませんか?

退職という避けられない現実を、会社の成長を加速させる最強の資産へと変える。
そのための、具体的な人事戦略と文化づくりを、共に設計しましょう。

011-858-7007

(受付時間:平日 9:00〜18:00)
「社員の退職について、少し考えを聞いてみたい」というご相談を、心より歓迎いたします。


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投稿者プロフィール

千葉将志税理士事務所代表 千葉将志
千葉将志税理士事務所代表 千葉将志
中小企業社長専門の経営コンサルタント兼税理士。
1977年生まれ、札幌出身。大手税理士事務所在籍中、税理士試験に合格。「試算表を作るだけ」の業務が中心で、経営支援に踏み込めない現状に強いジレンマを抱える。大手事務所を退所し、コンサル型の税理士事務所に入所するも思い描く支援とのギャップに苦悩。28歳の頃にお客さんゼロ・計画なしという状態で独立を決意。自分自身が事務所経営に苦しんだ経験から「経営者は孤独で、悩んでも税理士に相談しにくい」という現実を身をもって痛感。ふとしたきっかけで参加した勉強会で「税理士=税金や会計処理だけではない。経営戦略まで踏み込んでサポートできる存在でありたい」という想いを強くする。様々な経験を経て、現在は北海道札幌市白石区で「建設業や動物病院をはじめ、多業種の経営者を「数字」と「現場」の両面で支えている。単価・売上・利益向上と財務、人事・採用マーケティングのサポートを得意とする経営コンサルタント。