札幌市白石区のMFクラウド会計・弥生会計専門の千葉税理士事務所です。個人事業主や会社設立をして2年~5年目くらいの方で売上が1,000万円以下の方は要注意です。税務調査で売上に修正が入るだけで消費税の納税漏れを指摘されるかもしれないからです。実際に税務調査で消費税がかかるようになった場合に起こることを知っておきましょう。
税務調査で「消費税がかかることが決まったら起こること」とは【資金繰り悪化でパニック】
税務調査のシーズンとしてよく知られているのは「秋」です。
税務調査の連絡が増えるのは7月中旬から11月の上旬までです。
税理士さんがついていない個人事業主の方や法人への税務調査が来た場合、どれくらいの時間が与えられると思いますか?
税務署から「○○税務署××課税課の▲です。税務調査にお伺いしたいのでご連絡させていただきました」と電話が来た場合、希望日程を伝えてきます。
この突然の税務調査の連絡が来てから調査希望日程までは「2週間あるなし」で言ってくることがあります。
月初に電話をしてきたら月の中旬から下旬の調査希望日を指定してくるようです。
この短期間に税務調査の準備をすることになります。
税務調査の準備には次のものがあります。
①税務調査対象年度の会計データの打ち出し(総勘定元帳・仕訳帳)
②税務調査対象年度の領収書や請求書・預金通帳の用意
③不安な場合には税務調査から立会ってくれる税理さん探し
これくらい時間的余裕のない中で税務調査を迎えることになります。
税理士さんが立合ってくれる場合であれば、日程調整などをおこなってくれるので時間的に余裕が生まれることもあります。
ただ、時間がそれほどないなかで税務調査を迎えることになることを理解しておきましょう。
過去の税務申告内容に対する税務調査です。
今時点の経理処理についての話ではないので税理士さんができることは誤解されないように説明をしてくれることです。
過去の確定申告内容の税務調査で消費税が免税から課税事業者への変更が決まると予期しないことが起こってきます。
今回は税務調査で消費税が免税から課税に変わった場合のリスクを見ておきましょう。
1.税務調査で指摘されるだけで節税のできない消費税が数年分出る
消費税の計算方法は2種類あります。
2年前の売上が5,000万円以下であればこれは会社側が選択することができるものです。
この2種類の消費税の計算方法では「消費税の納税額」が異なります。
有利不利が出てしまうということです。
なぜ。消費税の計算方法に2種類もあるのかを踏まえて見ていきましょう。
①小規模事業者の事務負担の軽減のために作られた「簡易課税制度」
一般には知られていませんが、消費税は複雑な税制です。
原則的な消費税では売上の種類だけではなく、仕入れや物を購入した場合に消費税の対象なものかどうかも含めて細かく経理をしなければなりません。
しかし、これは消費税法について詳しく知っている事務員さんがいなければ難しいのです。
そこで売上の種類をベースに消費税を計算できる仕組みとして「簡易課税制度」が作られました。
売上の種類をベースに預かった消費税の10%~60%を納税するという税務申告をする方法です。
(簡易課税制度のメリット)
・売上の種類から消費税が計算できるので計算が簡単
・人件費など経費のうちに消費税のかからない場合には原則計算よりも消費税が安くなる
(簡易課税制度のデメリット)
・選択すると原則2年間「簡易課税制度で税務申告が強制」される
・設備投資や外注が多くなったりした場合、結果論として原則計算のほうが消費税が安い場合がある
(簡易課税制度の注意点)
簡易課税制度を選択するためには、その事業年度開始の日の前日までに「簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出する必要があります。
一度「簡易課税制度選択届出書」を提出すると「簡易課税制度選択不適用届出書」を出すまでは自動継続になります。
この届出を出していなければ結果的に「簡易課税制度」が有利でも、本則計算による申告納税が必要になります。
2年前の売上が5,000万円を超えている場合には、簡易課税制度選択届出書を提出していても本則による計算・納税が必要になります。
②税務のプロの税理士さんでも完璧な結果は予測不能【本則と簡易の選択】
税理士さんでも予測と実績が異なることがある非常に難しい選択になる税務です。
たくさんのお客様の実際の税務申告を行っていて経験があっても非常に難しいものです。
過去の実績をもとに予測をしてもあてにならないのが簡易課税制度のシュミレーションです。
急に「よい不動産物件が出て自社物件を購入」したり、投資促進税制のように「大型設備投資節税を実施」することもあります。
2年間簡易課税制度に縛られるわけですから、選択にはギャンブル的な要素も含まれてしまいます。
2・税務調査で消費税がかかることが急に決まると「本則課税」で計算
消費税には2種類の計算方法が認められているとお話ししました。
人件費が多い建設業・理美容業・飲食店・弁護士・社労士・司法書士などのサービス業の場合、簡易課税の方が有利になることが多くなります。
税務調査で修正が起こる前までは売上1,000万円で申告をしているので消費税は免税と考えています。
ところが税務調査で売上の修正が入ることにより、急に売上が1,000万円超の課税事業者に変更されるわけです。
そうなると初めて売上が1,000万円を超えた年の2年後の税務申告からは消費税の納税をする課税事業者ということになります。
簡易課税制度の場合と本則の場合では納税額に数十万円の開きが出ることがよく起こります。
税務調査は最低3年間分行われることから、消費税の発生が起こってしまうと1年・2年分の消費税をまとめて納税する必要が出ることがあります。
1年あたり40万円としても2年分になると80万円ものお金を急に用意しなければなりません。
本来であれば「簡易課税」など合法的な節税をする機会がないまま、消費税が確定してしまうというデメリットがあるのです。
税務調査で消費税が確定してくると予期していない資金繰りが必要になることで、運転資金と生活費に大きなダメージを与えてしまいます。
3.実は自分では正しいと思っていた経理が原因
自分で確定申告をしている個人事業主の方に多いのが「売上の計上時期が間違っている」という点です。
売上の計上時期が間違っていることで大きな問題に発展するポイントは「売上1,000万円ライン」と「売上5,000万円ライン」の2つがあります。
今回話題にするのは売上1,000万円ラインです。
自分で確定申告をしている個人事業主の方や法人で自分で経理をしている会社に多い間違いは売上は「自分で操作できる」という点です。
ある意味自分で売上の操作をすることは可能です。
ただし、合法的に売上を操作するというのは「法律の要件を満たす時期をずらす」ということをいいます。
自分勝手に売上をずらすことは「経理間違い」になるので税務調査で修正項目として取り扱われるので注意しましょう。
×確定申告で1,000万円を超えそうだから請求書は来年出そうはアウト
自分で経理をして確定申告をしている人の中には「請求書を出す」=「売上の計上時期」と考えている方が多いのに驚生きました。
とはいえ、私も税理士の仕事をしていなければ「請求書さえ出さなければ売上は後で計上できる」と考えていたかもしれません。
一般的には「お金が入るタイミングで売上が上がっていれば問題ない」と考えてしまいそうです。
お金をもらっていないのに売上が立つなんて理解できないですよね。
しかし、会計や税務では「一般の人の感覚は通用しない世界」なのです。
この請求書さえ出さなければ今期の売上にならないということをやってしまうと、消費税で大ダメージを受けることになってしまいます。
先ほどお話しした売上高1,000万円ラインと売上高5,000万円ラインの境界線が動くことによって節税できたものまで節税できない事態になるのです。
4.計画的に法人化で節税できたケースも多い
確定申告で正しい経理をしていれば「消費税に対しての節税」ができたケースが多いのです。
税務調査で急に消費税の課税事業者に変更されて、まとまった納税が起きてからでは身動きが取れないケースも出てきます。
税理士さんに税務顧問を依頼している個人事業主の方は確定申告だけではなく、会社設立を使った節税なども行っています。
税理士さんは今の個人事業の状態でできる節税の方法を考えてくれます。
これ以外に会社設立をして法人化した場合にできる節税も考えてくれるのです。
自分で経理・確定申告をしている場合ではできない節税シュミレーションをしてもらえるというメリットが大きいのです。
計画的に法人化することで消費税の免税期間の効果的な活用や納税資金繰りなど税理士さんが付いているから安心して行うことができるケースがあります。
5.まとめ
税務調査で売上の時期の修正や売上計上漏れを指摘されることで消費税が急にかかる人がいます。
急に消費税がかかることになった場合には数年分の消費税を一気に納税する必要がでます。
個人の生活費にも大きなダメージを与えるほどの納税になるので注意しましょう。
自分では正しいと思っていた経理が税務調査で認められないケースもあるので税理士さんに相談しておくことがベターです。
消費税は節税が難しい税務ですが、会社設立や簡易課税制度など合法的な節税方法についても税理士さんに相談すると安心です。