経営者は「サンタクロース」ではない。稲盛和夫が説く、社員をダメにする「小善」と、人を育てる「大善」の違い

🗓️ 2025年12月24日
👨‍💼 千葉将志税理士事務所代表 千葉将志
今日の経営の視点

「小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり」

― 稲盛和夫(京セラ創業者)

社員に好かれたい一心で、甘い顔をしたり、安易に金を渡したりするのは「小善」です。それは結果として会社を弱くし、社員を不幸にします。本当に彼らを愛するなら、規律を求め、成長の場を与える「大善」の鬼にならねばなりません。

経営者は「サンタクロース」ではない。
稲盛和夫が説く、社員をダメにする「小善」と、人を育てる「大善」の違い

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この記事の要点

  • 社員の歓心を買うためにボーナスや休暇を与えるのは「小善(小さな愛)」であり、長期的には組織を腐らせます。
  • 真のリーダーは、一時的に嫌われてでも高い基準を求め、社員の魂を磨く「大善(大きな愛)」を実践します。
  • 社長が社員に贈るべき最高のクリスマスプレゼントは、お金ではなく「没頭できる仕事(ビジョン)」です。

メリークリスマス。今日は12月24日です。
世の中がプレゼント交換に浮かれる中、あなたは一人、会社の数字と向き合っているかもしれません。

「今年の冬のボーナス、無理して出したけど、社員は満足してくれたかな...」
「来年はもっと待遇を良くしてあげたいな...」

そんな優しい想いを持つあなたに、あえて厳しいことを申し上げます。
あなたは、社員の「サンタクロース(都合の良いおじさん)」になってはいけません。

なぜなら、あなたがサンタになろうとすればするほど、社員は「テイカー(奪う人)」になり、会社は弱体化していくからです。

1. 「小善は大悪に似たり」の真意

稲盛和夫氏の有名な言葉に「小善は大悪に似たり」があります。

例えば、金銭的に困っている社員に対し、情に流されて安易にお金を貸したり、甘い評価で昇給させたりすること。これは一見「優しさ」に見えますが、稲盛氏はこれを「小善(ちっぽけな善)」と呼び、結果としてその人の自立心を奪い、ダメ人間にする「大悪」であると断じました。

🎅 小善のリーダー

・嫌われるのを恐れる
・基準を下げて褒める
・問題を見て見ぬ振りをする
・金で解決しようとする

結果➡ 組織が腐敗する

🦁 大善のリーダー

・成長のために厳しく叱る
・高い目標を課す
・信賞必罰を徹底する
・機会を与える

結果➡ 人が育ち、会社が勝つ

クリスマスの今日、自分に問いかけてみてください。
あなたの優しさは、相手の未来を思った「大善」ですか?それとも、自分が好かれたいだけの「小善」ですか?

2. 最高のプレゼントは「お金」ではない

では、大善のリーダーは何を与えるのでしょうか?
ドラッカーは「リーダーシップとは、責任である」と言いました。

社長が社員に与えるべき最高のギフトは、一時的なボーナス(おもちゃ)ではありません。
「自分たちの仕事が社会の役に立っている」という誇り(パーパス)と、「努力すれば報われる」という公正な舞台(評価制度)です。

サンタではなく「演出家」になれ

社員が本当に求めているのは、楽な環境ではなく「自分が主役になれる舞台」です。
厳しいリハーサル(業務)を乗り越え、お客様から拍手喝采(感謝)を浴びる瞬間。
その感動をプロデュースすることこそが、社長の仕事です。

そのためには、あなた自身が誰よりも高い基準を持ち、孤独に耐え、未来の脚本(経営計画)を描き続けなければなりません。

3. 来年は「鬼」になる覚悟を

2026年に向けて、経営環境はさらに厳しくなります。「仲良しクラブ」では生き残れません。

もし、あなたが「社員に厳しく言えない」「評価制度がなあなあになっている」と感じているなら、それは組織への愛情不足です。
来年は、愛を持って「鬼」になりましょう。

私たち千葉税理士事務所は、そんな孤独な決断をする社長の隣で、論理と数字で支える「参謀」でありたいと願っています。

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あなたは「サンタ型」?それとも「参謀型」?

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投稿者プロフィール

千葉将志税理士事務所代表 千葉将志
千葉将志税理士事務所代表 千葉将志
中小企業社長専門の経営コンサルタント兼税理士。
1977年生まれ、札幌出身。大手税理士事務所在籍中、税理士試験に合格。「試算表を作るだけ」の業務が中心で、経営支援に踏み込めない現状に強いジレンマを抱える。大手事務所を退所し、コンサル型の税理士事務所に入所するも思い描く支援とのギャップに苦悩。28歳の頃にお客さんゼロ・計画なしという状態で独立を決意。自分自身が事務所経営に苦しんだ経験から「経営者は孤独で、悩んでも税理士に相談しにくい」という現実を身をもって痛感。ふとしたきっかけで参加した勉強会で「税理士=税金や会計処理だけではない。経営戦略まで踏み込んでサポートできる存在でありたい」という想いを強くする。様々な経験を経て、現在は北海道札幌市白石区で「建設業や動物病院をはじめ、多業種の経営者を「数字」と「現場」の両面で支えている。単価・売上・利益向上と財務、人事・採用マーケティングのサポートを得意とする経営コンサルタント。