法人保険のスタンダードともいえる長期平準定期保険とはどのような保険でしょう?個人事業では経営上有利に使えなかった生命保険の代表的な長期平準定期保険をみていきましょう。
長期平準定期保険の保険料の経理とは?~効果的な長期平準定期保険の使い方~
個人事業の場合でも、事業をしている人は多額の保障が必要になります。
ところが所得税法の規定で多額の保険料を払っていても、原則として必要経費として経費で落とすことができません。
株式会社や合同会社などの法人を設立することで、事業をすることによって必要になってくる保障を保険料という経費を使って用意することが可能になります。
原則として、保険料は経費になりますが一定の保険については税務上すべてを経費で落とすことができないので注意が必要になります。
今回は、法人保険のスタンダードな長期平準定期保険という保険についてみていきます。
長期平準定期保険とはどんな保険?
長期平準保険は、定期保険の一種です。
定期保険は、満期保険金のない生命保険です。
満期保険金のない保険の保険料ですから、その期間の経過にともなって損金になる保険というのが原則的な考え方です。
本来の定期保険は短期間の保障を目的とした保険ですから、満期金もなく、保証期間も長期にならなず、保険料もその期間一定というものです。
ところが、長期平準定期の場合は定期保険の保証期間が長期間に及ぶにもかかわらず保険期間の保険料が均一になります。
若い時の低い保険料と後半の高い保険料を平準化して保険料均一化されているという点に注目されました。
後半の高い保険料の前払い部分が若い時から保険満了時までの保険料に含まれているものとして、長期平準定期の保険料の取り扱いが定められました。
【30歳で長期平準定期に加入している場合】
・30歳の保険料と80歳の保険料が同一
・30歳の人に保険事故が起こる確率と80歳の人に保険事故は80歳の方が高い
同じ保障の保険に30歳の人が入る保険料と80歳の人が加入する保険料は80歳の人の方が高いのが通常
保険事故が多いほど、保険金の支払いが高くなるため保険料が高くなるというのが通常です。
しかし、長期平準定期の保険料は30歳と80歳が均一になっています。
長期平準定期保険等の対象となる定期保険の範囲は?
長期定期低保険とは、保険期間が長期間にわたる定期保険のことをいいます。
半損保険といわれる長期平準定期保険
保険の種類:長期平準定期保険
契約者:法人
被保険者:役員又は使用人・役員・使用人の親族を含む
【保険期間等による規定】
①と②の両方の要件を満たすものが対象です。
①保険期間満了時の被保険者の年齢が70歳を超えること
②(加入時の被保険者の年齢+保険期間×2)>105
※逓増定期保険に該当するものを除く
[ad#co-1]
長期平準定期に該当するかどうかの判定の例)
・被保険者の加入時年齢:40歳
・保険期間:40年
①保険期間満了時の被保険者年齢 40歳+40年=80歳>70歳
②(加入時被保険者年齢40歳+保険期間40年×2)=120>105
①と②の両方を満たすため、長期平準保険に該当する
[ad#co-1]
【長期平準定期保険の経理処理】
①保険料の1/2に相当する金額を資産計上(保険契約開始~保険期間の60%の期間)
例)保険料100万円の場合の経理処理
・被保険者の加入時年齢:40歳
・保険期間:40年
保険期間の前半60%=40年×60%=24年
保険加入後24年間の経理処理
(保険料) 50万円/(普通預金)100万
(保険積立金)50万円
②保険料の取り崩しが発生(保険期間の60%の期間経過後の期間)
A:後半60%以後に支払ったその年度分の保険料は経費として処理
A:(保険料)100万円/(普通預金)100万円
B:前半60%までに積立てた保険料を取崩して経費化
前半60%に積立てた保険積立金
100万円×24年×1/2(資産積立)=1,200万円
後半期間の年数40年-24年=16年(保険取崩し期間)
1,200万円×12か月/(16年×12か月)=75万円(積立保険料の経費化処理)
B:(保険料)75万円/(保険積立金)75万円
後半40%期間の保険料:A+B=100万円+75万円(175万円)
【解約返戻金がない定期保険の経理処理・税務上取扱い】
解約返戻金のない定期保険でも、保険加入年齢や保険期間によっては、長期平準定期保険の要件に該当するものもあります。
長期平準定期保険を半損保険としている理由は、前払い保険料が含まれていることで解約返戻金があるということです。
解約返戻金のない保険期間が長期に及ぶ定期保険は、保険加入年齢・保険期間によって形式的に長期平準定期保険となる場合であっても、課税上の問題がないと考えられます。
一般の定期保険の法人税法基本通達9-3-5の取り扱いにより、その事業年度に対応した保険料はその事業年度の損金になります。
(通達9-3-5 引用)
法人が、自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする定期保険(一定期間内における被保険者の死亡を保険事故とする生命保険をいい、傷害特約等の特約が付されているものを含む。以下9-3-7までにおいて同じ。)に加入してその保険料を支払った場合には、その支払った保険料の額(傷害特約等の特約に係る保険料の額を除く。)については、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次により取り扱うものとする。(昭55年直法2-15「十三」により追加、昭59年直法2-3「五」により改正)
(1) 死亡保険金の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額は、期間の経過に応じて損金の額に算入する。
【長期平準定期保険の効果的な活用方法】
長期平準定期保険は、基本的には半損保険です。
半分が経費・半分が保険積立金という保険です。
全損保険と半損保険の出口を理解することが大切です。
全損保険の場合は、解約返戻金の全体が益金になります。
預金通帳に振り込まれた解約返戻金が、収入として益金になります。
入金されたお金を使って車両や機械を購入すると、収入と経費の対応関係がとれないため納税資金に苦慮することにつながります。
仮に、保険料が年間100万円のものを15年間損金で落としていた場合、1,500万円が経費として処理されています。
15年後に解約した場合、この1,500万円×返礼率のものすべてが益金として処理されてきます。
多額の益出しを起こすと、単年度の損金で相殺することは困難になります。
数年分の損金で落としたものが解約年度で益金として実現されてしまうので全損保険は注意が必要になります。
保険の解約プランなどをコントロールしなければなりません。
半損保険は着地時点の益出しもソフトランディング
法人の決算書上、保険料の半分は保険積立金という資産が形成されていきます。
解約時点では、保険積立金との差額だけが益金として処理されます。
全損の保険の場合は、預金に振り込まれた解約返戻金全体が収益でした。
半損保険の場合は、保険積立金との差額だけが収益として認識されます。
保険の収益だけに注目した場合、預金に振り込まれた金額の半分を使ったとしても、税金の支払いに影響しません。
会社の決算書からみた長期平準定期保険の特徴
保険の解約返戻金の額と、決算書上の保険積立金は一致しません。
①保険の立ち上がりが遅い時期
保険の解約返戻金<決算書上の保険積立金
※保険積立金に含み損がある時期
②保険がある程度立ち上がった後の時期
保険の解約返戻金>決算書上の保険積立金
※保険積立金に含み益がある時期
まとめ
定期保険は役員や従業員に万が一があった時のための保障として非常に重要な保険です。
長期平準定期保険の場合には、必要な保障とキャッシュの準備をすることができます。
法人保険のスタンダードな長期平準定期保険ですが、全損保険と半損保険との出口の違いもしっかりと理解しておきましょう。
しっかりと、保険の保障の重要性とキャッシュについての理解と使い方を理解していなければ会社の資金繰りに影響するので注意しましょう。