年商1億円の壁を越える飲食店の「脱・どんぶり勘定」。利益を最大化する3つの数字とは?

「売上は順調に伸びている。でも、月末になると手元に思ったほどキャッシュが残っていない…」
「FLコストが適正なのか、実はよく分かっていない」
年商が1億円に近づき、事業が軌道に乗ってきた飲食店経営者の方から、このようなご相談をいただくことが増えています。
もしあなたが同じような悩みを抱えているとしたら、それは経営がうまくいっていないのではありません。むしろ逆です。あなたの会社が成長し、これまでの感覚的な経営から「数字に基づいた経営」へ進化すべきステージに来た、重要なサインなのです。
この記事では、年商1億円~10億円規模の飲食店経営者が「どんぶり勘定」から卒業し、利益を安定的に生み出す経営体質を作るために不可欠な**「3つの重要指標」**と、明日から実践できる具体的な改善アクションを、財務とマーケティングに強い専門税理士が徹底解説します。
なぜ「どんぶり勘定」では年商1億円の壁を越えられないのか?
個人店や創業期であれば、オーナーの感覚や気合で経営は回ります。しかし、年商1億円を超え、多店舗展開や従業員の増加を見据えるステージでは、「どんぶり勘定」は成長の足かせとなってしまいます。
- 機会損失の発生: 正確な収益構造を理解していないため、本当に力を入れるべきメニューや、効果的な販促活動に気づけず、得られるはずだった利益を逃してしまいます。
- 資金ショートのリスク: 売上は立っているのに、仕入れや人件費の支払いタイミングが重なり、突然資金が足りなくなる「黒字倒産」のリスクが常に付きまといます。
- 社員が育たない: 社長が「もっと頑張れ!」と檄を飛ばしても、具体的な数値目標がなければ従業員は何をすべきか分かりません。結果、指示待ちの組織になってしまいます。
「儲かっている“つもり”」の状態が、実は一番危険なのです。

飲食店経営者が絶対に見るべき3つの経営指標
難しい会計知識は必要ありません。まずは以下の3つの数字だけ、自社の状況を正確に把握することから始めましょう。
指標1:FLRコスト【守りの財務】
FLRコストとは、飲食店の三大経費である**F(Food:食材原価)、L(Labor:人件費)、R(Rent:家賃)**のことです。この合計額が売上に対して何パーセントを占めるか(FLR比率)を把握することが、利益管理の第一歩です。
【業態別 FLR比率 目安】
- 居酒屋・レストラン: 60%~65%
- カフェ・喫茶店: 65%~70%
- ラーメン店: 55%~60%
あなたの店のFLR比率は、この目安と比べてどうでしょうか?
陥りがちな罠
「原価率を下げたいから、安い食材に変えよう」「人件費を削るため、ホールスタッフを減らそう」。これは短期的に数字が改善するかもしれませんが、顧客満足度の低下を招き、長期的な売上ダウンに繋がる危険な判断です。
改善アクション
- メニューのABC分析: 全メニューを売上高順にA・B・Cの3ランクに分け、貢献度の低いCランクメニューの見直し(改良または廃止)を検討します。
- フードロス削減: 発注量の見直し、ポーション管理の徹底、予約状況に応じた仕込み量の調整など、具体的なロス削減策をリストアップし、実行します。
- シフトの最適化: 曜日や時間帯ごとの来客数データを元に、無駄のない人員配置を考えます。

指標2:損益分岐点売上高(BEP)【攻めの計画】
損益分岐点売上高とは、利益がちょうどゼロになる売上高のことです。これを把握すれば、「あといくら売れば黒字になるのか」「目標利益を達成するには、いくら売る必要があるのか」が明確になります。
なぜ重要なのか?
「今月の目標は800万円だ!」とただ言うよりも、「うちは毎月500万円を超えれば、そこから先は全部利益になる。だから800万円を目指そう!」と説明する方が、スタッフのモチベーションは格段に上がります。損益分岐点は、全社員が同じ目標を共有するための共通言語になるのです。
改善アクション
- 目標利益からの逆算: まず「今月はいくら利益を残したいか」を決めます。そこから逆算して必要な売上目標を設定し、日々の売上目標に落とし込みます。
- アイドルタイムの活用: 比較的客数の少ない時間帯に、テイクアウト限定メニューやハッピーアワーを導入し、損益分岐点を超えるための「あと少し」の売上を積み上げます。
指標3:キャッシュフロー(CF)【未来への投資】
帳簿上は利益が出ているのに、手元の現金がない。これは、「利益」と「キャッシュ(現金)」のズレによって起こります。特に、クレジットカード売上の入金サイトが長く、一方で仕入れ代金の支払いが先にくる飲食店では、このズレを意識することが極めて重要です。
見るべきは、決算書の**キャッシュフロー計算書にある「営業キャッシュフロー」**です。これが安定してプラスになっていれば、本業でしっかりと現金を稼げている証拠です。
改善アクション
- 簡単な資金繰り表の作成: 難しいものでなくて構いません。毎月の現金の入り(売上入金など)と出(仕入れ、人件費、家賃など)を予測し、月末に現金がいくら残るかを表にしてみましょう。これだけで、資金ショートの危険を事前に察知できます。
- 投資判断の基準に: 新規出店や大型の厨房機器導入といった大きな投資は、必ずこのキャッシュフローの状況を見て判断します。「利益が出ているから」という理由だけで決断するのは禁物です。

【応用編】マーケティングと財務を連動させ、利益を最大化する
数字に強い経営者は、マーケティング(販促活動)も感覚で行いません。
例えば、新しい顧客を一人獲得するためにかかった費用(CPA)と、その顧客が将来にわたってお店にもたらしてくれる利益(LTV)を意識します。
CPAがLTVを上回るような販促は、やればやるほど赤字になります。逆に、リピート顧客のLTVを高める施策(例:LINE公式アカウントでのクーポン配信)は、CPAが低く、利益に繋がりやすいと言えます。
どのグルメサイトに広告を出すか、SNSをどう活用するか。これらも全て**「いくらの投資で、いくらの利益が見込めるのか」**という数字の視点で判断することで、無駄な広告費を削減し、効果を最大化できます。
まとめ:数字は、あなたの経営の羅針盤になる
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
「脱・どんぶり勘定」のために、まずは3つの指標を意識することから始めてみてください。
- FLRコストを把握し、無駄をなくす【守り】
- 損益分岐点を理解し、目標を共有する【計画】
- キャッシュフローを管理し、未来に備える【投資】
感覚的な経営から卒業し、数字という客観的な根拠を持つことで、社長のあなたは自信をもって意思決定ができ、社員も同じ目標に向かって進むことができます。数字はあなたを縛るものではなく、あなたの会社を次のステージへ導く、最強の羅針盤となるのです。
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