同じ保障の定期保険でも、保険金の受取人によっては税金の取り扱いが変わってしまいます。税金の取り扱いが変わるということは経理処理にも注意が必要です。
役員や従業員の遺族が保険金受取の定期保険とは?
前回は、保険金の受取人が法人の場合についてお話ししました。
今回の定期保険は、保険金の受取人が法人ではなく、「役員・従業員の遺族」の場合です。
万が一が起きた際に、直接保険金が遺族に渡ることで役員や従業員の遺族の生活保障対策として活用される契約形態です。
今回の定期保険についても、前回と同じ通達を参考にします。
(通達9-3-5 引用)
法人が、自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする定期保険(一定期間内における被保険者の死亡を保険事故とする生命保険をいい、傷害特約等の特約が付されているものを含む。以下9-3-7までにおいて同じ。)に加入してその保険料を支払った場合には、その支払った保険料の額(傷害特約等の特約に係る保険料の額を除く。)については、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次により取り扱うものとする。(昭55年直法2-15「十三」により追加、昭59年直法2-3「五」により改正)
(1) 死亡保険金の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額は、期間の経過に応じて損金の額に算入する。
(2) 死亡保険金の受取人が被保険者の遺族である場合 その支払った保険料の額は、期間の経過に応じて損金の額に算入する。ただし、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該保険料の額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。
役員又は従業員の遺族が死亡保険金の受取人の定期保険
①保険の加入形態
・契約者:法人
・被保険者:役員・従業員
・死亡保険金の受取人:役員又は従業員の遺族
②保険料は加入している人によって処理が異なる
・普遍的加入で福利厚生費
役員だけが加入する場合や特定の従業員だけが加入するのではなく、要件を満たす役員・従業員全員が加入する形態であれば一種の福利厚生とみなされ法人の損金に算入されます。
この場合には、保険料は期間の経過に応じて損金の額に算入されることになります。
「月払い・半年払い・年払い」保険料については、短期前払費用の特例の対象
つまり、支出時の損金として経理することが可能です。
短期前払費用の特例対象ということは、きちんと「前払費用」として翌事業年度以後の保険料相当を経理処理することもできます。
・一括払い・一時払いなど短期前払費用の特例の対象に該当しない形態には注意が必要です。
保険料に対して短期前払費用の特例が適用できないため、厳格に「当期に対応す保険料分のみ」を損金に算入します。
・特定の者だけの保険加入の場合には給与課税
普遍的加入に該当しない場合には、特定の人だけが経済的利益を得ているとみられます。
この場合には、特定の人に対する経済的利益=給与として課税されていきます。
給与課税がおこなわれた保険料相当額は、その給与課税がおこなわれた者の生命保険料控除の対象となります。
(参考)役員又は使用人の親族を被保険者とする定期保険も損金算入
中小企業で実際にこのような加入がおこなわれている可能性は高くないと思いますが、通達上は役員又は使用人の親族を被保険者とする定期保険についても9-3-5の適用対象となっております。