★★★★☆
約14分
この記事から得られる3つの効果
- 社員のモチベーションが「お金」だけでは決して上がらない、科学的な理由がわかります。
- 社員の"やる気"に火をつけ、自ら成長する組織を創る「動機づけ要因」とは何かを学べます。
- 「ボーナス査定」という悩ましい業務を、最強の組織活性化ツールに変える視点が手に入ります。
11月。今年も冬のボーナスの季節がやってきました。あなたは今、社員たちの顔を思い浮かべながら、一人、重い電卓を叩いているかもしれません。
「今年の利益は厳しかったが、社員の頑張りに報いるため、なんとか奮発しよう」「A君はよくやったから多めに、B君はもう少し頑張ってほしいから…」
その悩みの根底にあるのは、経営者としての、社員への誠実な想いです。そして、同時に、こんな切実な"期待"はありませんか?
「これだけ払うのだから、来期はもっと、"やる気"を出して頑張ってくれるはずだ」と。
しかし、もし、その期待が、支給日のわずか3日後には跡形もなく消え去り、社員の不満さえ生み出しているとしたら…?この記事は、その残酷な真実と、あなたの高潔な想いを本当に社員に届けるための、心理学に基づいた戦略についてお話しします。
1. 残酷な真実:ボーナスは「やる気」を買えない
まず、経営者として、一つの残酷な真実を受け入れなければなりません。それは、**「お金(給与・ボーナス)は、社員の不満を"減らす"ことはできても、社員のやる気を"増やす"ことはできない」**という事実です。
あなたが奮発したボーナス。社員は支給日には喜ぶでしょう。しかし、その効果は長くは続きません。なぜなら、彼らにとってボーナスは「労働の対価」であり、「もらって当たり前のもの」だからです。もし昨年より1円でも少なければ強烈に不満を持ちますが、多かったからといって、来期のパフォーマンスが劇的に上がるわけではないのです。
これは、あなたの想いが足りないからではありません。人間のモチベーションが、そういう仕組みで動いていない。ただ、それだけのことなのです。
2. 「衛生要因」と「動機づけ要因」という、決定的な違い
このメカニズムを、経営学・心理学の権威であるフレデリック・ハーズバーグは**「二要因理論」**として見事に解き明かしています。
なぜ、あなたの"想い"は空回りするのか?
- ① お金(衛生要因):
給与、ボーナス、福利厚生、労働条件など。
これらは、整備されていなければ「不満」の原因になります。しかし、どれだけ満たしても、「満足(=やる気)」には繋がりません。例えるなら、**会社の"土壌"**です。土が汚染されていれば作物は育ちませんが、土が肥えているだけでは、作物は育たないのです。 - ② 承認(動機づけ要因):
仕事そのものの達成感、他者からの承認、責任の拡大、成長の実感など。
これらこそが、社員の「満足(=やる気)」に直結する、唯一の要因です。例えるなら、**土壌に降り注ぐ"太陽の光"や"水"**です。
多くの経営者が、社員に「不満」を抱かせまいと、必死で土壌(衛生要因)にお金を注ぎ込みます。しかし、社員が本当に求めているのは、その土壌の上で成長を実感できる、太陽の光(動機づけ要因)なのです。
3. 社員の魂に火をつける、3つの「動機づけ」戦略
朗報です。社員の心に火をつける「動機づけ要因」は、そのほとんどが**コストゼロ**で、あなたが今すぐ実行できるものです。ボーナスの査定額で悩む時間の1割を、こちらの3つの戦略に振り分けてみてください。
戦略①:「承認」の言葉を、給与明細に添える
ボーナスの「金額」だけを渡してはいけません。なぜ、その金額になったのか。あなたが、彼/彼女の、この半年の**どの「行動」を評価しているのか**を、具体的な「言葉」にして渡すのです。「今期のAプロジェクトでの君の粘り強さが、チーム全体を救った。ありがとう」。金額以上の価値を持つ、この"承認"こそが、社員の魂を震わせます。
戦略②:「小さな達成感」をデザインする
社員が「自分は成長している」と実感できる瞬間を、意図的に創り出します。決して難しいことではありません。「この顧客対応、次はB君に任せてみる。君ならできる」。昨日より少しだけ難しい仕事を任せ、成功体験を積ませること。この「小さな達成感」の積み重ねが、大きな自信とやる気を育てます。
戦略③:「仕事の意義」を、物語で共有する
「なぜ、我々はこの仕事をしているのか?」。その答え(=経営理念)を、スローガンではなく、社長自身の「物語」として語ってください(前回の記事参照)。「君のその単純作業が、巡り巡って、お客様のどんな笑顔に繋がっているのか」。仕事の「意義」を理解した社員は、もはやお金のためだけに働く「作業員」ではなく、ビジョンを共にする「パートナー」へと変わります。
【高度蓋然性予測】2026年、採用市場の変化
私たちのデータモデルは、2026年の採用市場において、特にZ世代を中心とした若手層が、転職先を選ぶ最大の理由として「給与額」よりも**「承認・賞賛される文化」や「成長できる環境」**を挙げる割合が、逆転する可能性が極めて高いと予測しています。日経新聞でも報じられているこの「働きがい」へのシフトは、もはやトレンドではなく、スタンダードです。今、「動機づけ要因」に投資する会社だけが、未来の人材獲得競争の勝者となります。
4. あなたは、"給与計算機"ではなく、"リーダー"になる【決断の時】
冬のボーナスで、あなたの想いは本当に伝わっていますか?
社員のやる気をお金で買おうとすることは、経営者として、ある意味で"楽"な選択かもしれません。しかし、それはあなたの会社と社員の可能性に、自ら蓋をすることに他なりません。
道A:『給与計算機』としての未来
これまで通り、お金(衛生要因)で社員の不満を抑え込もうとする道。社員は常にお金に不満を持ち、あなたは毎年、報われないボーナス査定に頭を悩ませ続ける。
道B:『魂の指揮者』としての未来
承認と言葉(動機づけ要因)で、社員の魂に火をつける道。社員は自ら成長し、会社は利益を生み出す。あなたは、お金の悩みから解放され、真のリーダーとしての喜びを手に入れる。
あなたの魂は、どちらの未来を渇望していますか?
もし、あなたが後者の『魂の指揮者』としての未来を選ぶと、今、決断されたのなら。その最初の、そして最も重要な一歩は、あなたの会社の「人事」を、単なる給与計算から、社員のやる気を最大化する「戦略」へと、共に設計し直すパートナーとの対話です。
あなたの"想い"を、社員の"やる気"に変える「査定」、始めませんか?
「お金」と「承認」を両立させ、社員のモチベーションを最大化する評価制度。
あなたの会社だけの「最強の人事戦略」を、今、共に設計しましょう。
011-858-7007
(受付時間:平日 9:00〜18:00)
「今年の冬のボーナス査定、どう思う?」そんな率直なご相談を心より歓迎いたします。
お電話の際に「ブログを読んだ」とお伝えください
毎月先着5社様限定で、60分間の無料オンライン経営相談(通常10万円相当)を優先的にご案内します。
「まだ電話は早い」「今の税理士との付き合いもある」という方はこちら
現在の顧問税理士はそのままで、経営改善のヒントだけを気軽に入手したい、という賢明な経営者様のために、特別なコンテンツをご用意しました。
税理士を変更せずに経営改善に取り組む投稿者プロフィール

-
中小企業社長専門の経営コンサルタント兼税理士。
1977年生まれ、札幌出身。大手税理士事務所在籍中、税理士試験に合格。「試算表を作るだけ」の業務が中心で、経営支援に踏み込めない現状に強いジレンマを抱える。大手事務所を退所し、コンサル型の税理士事務所に入所するも思い描く支援とのギャップに苦悩。28歳の頃にお客さんゼロ・計画なしという状態で独立を決意。自分自身が事務所経営に苦しんだ経験から「経営者は孤独で、悩んでも税理士に相談しにくい」という現実を身をもって痛感。ふとしたきっかけで参加した勉強会で「税理士=税金や会計処理だけではない。経営戦略まで踏み込んでサポートできる存在でありたい」という想いを強くする。様々な経験を経て、現在は北海道札幌市白石区で「建設業や動物病院をはじめ、多業種の経営者を「数字」と「現場」の両面で支えている。単価・売上・利益向上と財務、人事・採用マーケティングのサポートを得意とする経営コンサルタント。
最新の投稿
代表コラム2025年11月3日いまだに「経費精算」に消耗している社長様へ。― AIが、あなたの会社の“面倒な事務作業”を9割削減する方法
ちば塾コラム(保険)2025年11月2日『あなたのクライアントの「来年度計画」、それは「未来の設計図」ですか?それとも「過去の反省文」ですか?~成長を加速させる、バックキャスティング(未来逆算)計画術~』
代表コラム2025年11月2日『なぜ、社長が奮発した“冬のボーナス”は、社員の“やる気”に火をつけないのか?~お金(衛生要因)と「承認」(動機づけ要因)の決定的な違い~』
代表コラム2025年10月31日なぜ、"社員を気持ちよく送り出す"会社ほど、成長し続けるのか? - 退職を"最強の資産"に変える、新時代の人事戦略




