この記事の要点
- 原材料高・暖房費高騰の今、「安売り」を続けることは、社員と下請けを苦しめる「悪」になり得ます。
- 稲盛和夫氏の「値決めは経営」の真意を理解し、利益が出る適正価格へ移行する勇気が必要です。
- 「10%値上げしたら、客数が何%減っても利益は同じか?」という財務シミュレーションを公開します。
北海道の冬が近づき、暖房費や物流コストが容赦なく経営を圧迫しています。
「本当は値上げをしたい。でも、ライバル店は据え置いているし、ウチだけ上げたらお客さんが離れてしまう...」
そうやって胃を痛めながら、身を削って価格を維持している経営者様へ。その努力は立派ですが、少し視点を変えてみませんか?
「お客様のために」と思っているその安売りが、実は巡り巡って「お客様の質を下げ、社員を疲弊させ、会社の未来を奪っている」としたら。
この記事では、京セラ創業者・稲盛和夫氏の哲学と、現代のマーケティング理論を融合させ、あなたが自信を持って「適正価格」を提示するためのロジックをお伝えします。
1. 「値決めは経営」である(稲盛和夫の教え)
稲盛和夫氏は、「値決めこそが経営者の仕事であり、経営の死命を制する」と説きました。営業部長任せにしていい仕事ではない、という意味です。
多くの社長は「原価+利益=価格」という「コスト積み上げ方式」で価格を決めがちです。しかし、これは間違いです。
正しい値決めとは、「お客様が『この価値なら喜んで払う』と認める最高値」を見極めることです。
もし、値上げをしてお客様が離れるなら、それは価格の問題ではなく、「価格に見合う価値(商品力・サービス・体験)」が提供できていないことが真の問題です。
値上げへの恐怖は、自社の商品への「自信のなさ」の裏返しではないでしょうか?
2. 「安売り」は誰を傷つけるのか?
マーケティングの権威、ダン・ケネディはこう言っています。
「最安値で売ることに、戦略的な優位性は何一つない(No Strategic Advantage)。」
日本には「清貧」の美徳がありますが、経営においては危険です。
利益が出ない価格で売るということは、以下の連鎖を引き起こします。
- 社員に十分な給与やボーナスを払えない(社員の犠牲)
- 下請け業者にコストダウンを強要する(パートナーの犠牲)
- 設備投資や教育にお金を使えず、品質が低下する(顧客への裏切り)
つまり、「適正な利益が出る価格で売ること」こそが、全方位に対する誠実さ(Ethical Profit)なのです。
3. 【財務の真実】10%値上げの威力
「精神論はわかった。でも現実に売上が減るのは怖い」
そう思う方のために、数字でシミュレーションしてみましょう。
仮に、あなたの会社の商品が以下の条件だったとします。
- 販売価格:1,000円
- 原価:700円(粗利 300円)
- 販売数:1,000個
- 総利益:30万円
ここで、勇気を持って「10%値上げ(1,100円)」をしたとします。
逆に、怖がって「10%値下げ(900円)」をしたとします。
元の「総利益30万円」を維持するために、どれだけ売らなければならないでしょうか?
| 現状 (1,000円) |
10% 値上げ (1,100円) |
10% 値下げ (900円) |
|
|---|---|---|---|
| 1個の粗利 | 300円 | 400円 (+33%) | 200円 (-33%) |
| 必要な販売数 | 1,000個 | 750個 (25%減でもOK) |
1,500個 (1.5倍売る必要あり) |
いかがでしょうか。
10%値上げした場合、お客様が25%減っても(4人に1人が去っても)、利益は同じなのです。
逆に、安易に10%値下げすると、今の1.5倍働いて、ようやくトントンです。
あなたは、社員に「給料は上げられないけど、仕事量は1.5倍にする」と言えますか?
これが、数字で見る「値上げの正当性」です。








