札幌市白石区にある弥生会計・クラウド会計専門の千葉税理士事務所です。クラウド会計やAIの台頭によって税理士はいらないという話もでてきています。実際のところクラウド会計を使うと税理士がいらないというところまできているのかどうかを考えてみましょう。
会計ソフトで自動取り込みすると確定申告まで自分でできるのか?【税務調査対策もできるのか】
今から15年前の税理士事務所でAIやクラウド会計がでるということは考えられていなかったと思います。
私が税理士事務所で働き始めたときは、パソコンで経理処理を行っているけども、3.5インチフロッピーディスクでデータをバックアップするような時代でした。
少し後からUSBメモリを使って、データバックアップができるようになったという感じです。
今のように数ギガというものでありませんでしたが、フロッピーディスク1枚では取り切れないデータをバックアップできるようになりました。
このPC環境を知っている方からすれば、AIやクラウド会計というものがなかったということがお分かりいただけると思います。
この時期の家庭用ゲーム機はPlayStation2のだったようです。
そんな時代には自動経理というものがでるとは考えられませんでした。
現在は、クラウド会計のソフトウエアは頻繁にバージョンアップを繰り返し今までにない速度で進化し続けています。
昔の経理担当者では考えもしない使い方が、現在のクラウド会計です。
(目次)
1.クラウド会計でできることとは
2.税務調査はクラウド会計で変化するのか
3.クラウド会計を使っても税金知識は必要
4.複数税率の消費税の取り扱いは?
5.まとめ
1.クラウド会計でできることとは
クラウド会計は種類によって特性が異なりますが、主だった特徴は共通しています。
①クラウド会計の特徴1:インターネットバンキングやクレジット明細を会計ソフトに取込める
②クラウド会計の特徴2:領収書やレシートをアプリを使って自動取り込みができる
③クラウド会計の特徴3:各種周辺ソフトと連動することで給与・請求などが簡単にできる
インターネットバンキングやクレジット明細の自動取り込みは非常に便利な機能です。
今まで経理担当者が1本・1本入力していた作業が自動化されるのです。
金額の入力間違いなども発生しないため、細かい入力が必要なくなります。
よくクラウド会計を導入すると事務作業が1/20になるなどといっているのは、この入力作業が省略されるからです。
2.税務調査はクラウド会計で変化するのか
おそらく今時点でクラウド会計を導入している個人事業主・法人への税務調査件数はそれほど多くないと思います。
既存の会計ソフトをつかっている先への税務調査の方が多いと思います。
これはクラウド会計が急激に普及してきているという事情のためで、税務調査にあたる事業書のうちクラウド会計というところはそれほど多くないためです。
今後はクラウド会計の普及率が上がると、クラウド会計の税務調査も増えてくることになると思います。
実際にクラウド会計を導入している先での税務調査はどうなるの?
こんな疑問を持っている方も多いかもしれません。
税務署側としてはどの会計ソフトを使っていても、調査手法自体は変わりません。
税務調査の通知があった場合には、総勘定元帳・仕訳帳といった帳簿をプリントアウトしておきます。
これはどの会計ソフトでも変わらないことになります。
これくらいであれば税務調査でバレないと思っている方もいるようですが、日本の税務署は優秀です。
たくさんある領収書・請求書の中から問題のあるものを発見する能力にたけています。
1枚の領収書だけではなく、その近辺のレシートや請求書などから背景を検討して質問をしてくることで売上の漏れや経費ではないものをあぶりだしたりもします。
クラウド会計を導入している場合に、ネックになるのは領収書などの資料の保管状況です。
クラウド会計のウリになっているレシートをスキャナで取り込んだり、携帯アプリで取り込んだ場合、領収書などの保存状況が悪いケースがあるためです。
税務調査での指摘・修正申告案件が増える可能性は十分ある
経理自体が簡単・自動になることで「正しくないものも正しいように経理される」といううわべの処理がおこなわれやすくなります。
経費に関係のない領収書を自動取り込みで経費として取り込んでしまう可能性も十分にあるのです。
「自動経理=正しい経理とは限らない」という大前提があることに注意しましょう。
税務調査経験のある税理士さんに、経費についての考え方などを教わっておかなければクラウド会計を使うことでリスクはより大きくなる可能性が高いと考えています。
税務署と意見の相違がある場合、税法に照らして正しい・正しくないという議論が必要になってくるので経理の前段階で知識が必要といえます。
税理士さんを頼んでいない個人事業の方や記帳代行会社に経理を頼んでいる場合、税務調査での否認項目が多くなるのはこのためです。
3.クラウド会計を使っても税金知識は必要
税務調査はクラウド会計であろうと今までの会計ソフトであろうと変わらないというお話をしました。
むしろ、クラウド会計になることで経営者側のチェックが甘くなってしまって税務調査トラブルになるリスクが高くなることもあり得ます。
クラウド会計は、帳簿をつける時間が短縮されるツールということを押えておきましょう。
税務調査を前提に考えると経理間違いのリスクもありますが、経理の前段階で税金に関する知識も必要になります。
その理由は税金の計算上どうなるかを考えて経理処理を決めるというのが一般的な流れだからです。
例えば、
①個人事業の人が経費にならない支払いをした=事業主貸
②スナックで仕事の打ち合わせをした=交際費
となります。
税金には実質で判断するという大原則があります。
例えば、別人名義の領収書であっても実際に使った人がAさんであれば、Aさんの経費として処理をするといった具合です。
そう考えると②の仕事の打ち合わせをしたという事実に基づくと、会議費という経費でもよいということになります。
ところが会議費とは会議を通常行うべき場所において行われることという別の考え方があるため、実質的な判断だけではだめということになります。
クラウド会計も税金の知識がないと初期登録を間違ってしまいます。
初期登録を間違ってしまうと、大量に間違いが自動複製されてしまうのでリスクが大きくなってしまいます。
4.複数税率の消費税の取り扱いは?(消費税10%とクラウド会計)
令和1年10月1日からの消費税10%になると、8%のものと10%のものが混在するということになります。
細かくいうと、令和1年9月30日までの8%と10月1日以後の8%と10%になるのです。
同じ8%に見えても、旧税率の8%と新税率の8%は中身がことなるので区分が必要になります。
少し話を戻して、8%と10%が混在する場合にクラウド会計はどこまで対応できるのかわかりません。
クラウド会計の自動取り込み機能は主にクレジットカードの利用明細のデータから自動経理を行います。
これには消費税情報がもともと入っていません。単純に一律8%となっていたから自動経理ができていただけです。
レシートや領収書から画像認識をして自動経理するものもありますが、今のところ完璧とは程遠いものです。
そうなるとクレジット明細のデータから消費税情報を正しく含んだ経理を自動ですることも難しい。
さらに、画像認識についてはより難しいと考えられます。
自分で経理することが難しければ税理士さんに記帳代行をお願いした方がよいかもしれません。
5.まとめ
クラウド会計の普及は急激に伸びていると感じますが、クラウド会計が普及することによって、税務調査での思わぬトラブルが増えていくのではないかと思います。
その理由はクラウド会計の自動経理を過信してしまって、誤入力や誤った経費処理などを見落としやすくなるからです。
それ以外にネットの情報だけを信じて経費で落ちると思って何でもかんでも処理してしまうというケースも考えられます。
税務調査はクラウド会計になっても大きく変わることがないので、しっかりとした経理をしていなければトラブルが増加します。
税務調査での対応は税金の知識と経験があってこそ対応できるため、日頃から税理士さんに相談しながら経理をしていくことが重要だと思います。
千葉税理士事務所は本気で経営をしている経営者と事業承継を考えている会社におすすめの税理士事務所です。