札幌市白石区にある建設業専門の千葉税理士事務所です。建設業の個人事業を法人化したときの確定申告の注意点をみていきましょう。
建設業の個人事業を法人化したときの確定申告の注意点
建設業の方は一人親方として法人化するケースもよくあります。
建設業を法人化する段階から建設業に強い税理士さんに相談しておくことで、法人化の後のメリットが大きくなることが多いので事前に相談しておくことをおすすめします。
今回は個人事業の建設業を法人化した年の最後の個人確定申告の注意点を考えてみましょう。
(目次)
1.建設業を法人化した後に提出する書類とは
2.建設業を法人化するときにでる取引とは
3.建設業法人化の際に注意すべき消費税とは(個人編)
4.建設業の新設法人で注意すべき消費税とは(法人編)
5.建設業専門の税理士事務所に相談しよう
1.建設業を法人化した後に提出する書類とは
個人事業の建設業を法人化することを「法人成り(ほうじんなり)」といいます。
法人成りをする場合には、新規で開業した法人の税金や経理についてばかり気が向いてしまいます。
法人を設立するのと同時に個人事業の廃業という側面もあるので注意しましょう。
法人化をした後に税務署などに提出する代表的な書類は次の通りです。
①個人事業の開業届・廃業等届出書
②所得税の青色申告の取りやめ届出書
③給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
④事業廃止届出書(消費税)
⑤個人事業税の事業開始等の届出書(事業税の廃止届)
実際には事後的になってしまうケースもあるのですが、廃業後速やかに提出しておきましょう。
ただし、青色申告の取りやめについては不動産所得などその他の所得や事業の一部が個人に残る場合には提出しないように注意してください。
青色申告は事業だけに優遇があるわけではなく、不動産所得、事業所得、山林所得がある人を対象にしているものです。
事業を廃止したからといって「青色申告の取りやめ届出書」を提出してしまって青色申告がなくなってしまうと不動産所得などの青色申告にも影響してしまいます。
青色申告のメリットがなくなってしまうだけで税金で大きな損をすることがあるので注意しましょう。
2.建設業を法人化するときにでる取引とは
建設業を法人化する場合に気がつかないまま起きている取引があるので注意しましょう。
この取引を考えないまま建設業を法人化して損をしているケースが多いので税理士さんに相談した方がよいかもしれません。
(個人事業の建設業を法人化する際におきるもの)
①個人事業の在庫や未完成現場の法人引き継ぎ
②個人事業で使っていた車輌や機械の法人引き継ぎ
③支払っていた経費で法人開始後の期間にかかるものの引き継ぎ
①個人事業の在庫や未完成現場の法人引き継ぎ
個人事業で購入していた資材や塗料などの残りを法人で使う場合には、個人事業から法人へ「売る」というかたちになります。
社長が自分で払って購入したものを法人で使うだけですが、法人と個人事業主の自分とは別物ということになるためです。
ここで消費税を納めていた個人事業主の場合には、売上に対する消費税も払うことになります。
難しいのは年の途中で法人化するケースです。
年の途中の場合、現場が個人と法人でまたぐケースが出てきます。
この場合、未完成の現場を法人に売るという処理をすることになります。
実際にはそのまま継続して現場を終わらせて、元請けに納品するということですが最終的に現場を納めるのは法人になっているケースがあるためです。
この場合、現場の原価などをしっかりと集計していなければいくらで売上を上げればよいかわからないということになるので注意しましょう。
②個人事業で使っていた車輌や機械の法人引き継ぎ
個人事業で使っていた機械や自動車を法人で使う場合には2つの方法があります。
そのうち名義を法人に変える場合には、法人への譲渡をすることになります。
この場合、自動車などの時価がいくらかの見積もりをとっておくことが大事になります。
時価の1/2未満で譲渡してしまうと、時価で売ったものと見なすという規定があるので注意が必要です。
さらに所得税法157条(同族会社の行為又は計算の否認)で、自分の法人へ低額譲渡をした場合に税務署がこの低額取引を認めないことができる規定もあるので金額には注意が必要です。
③支払っていた経費で法人開始後の期間にかかるものの引き継ぎ
年払いの損害保険料や年払いの家賃など長期間に及びものを支払っている場合、法人になってからの期間の分が含まれていることがあります。
その場合には、個人事業時代の部分と法人になってからの部分を按分して計算する必要があります。
3.建設業法人化の際に注意すべき消費税とは(個人編)
建設業を法人化する場合には消費税の影響もしっかりと考慮に入れておきましょう。
在庫が多い場合や法人に譲渡する車輌・機械などの譲渡が絡むケースでは消費税納税が多額になることがあります。
法人化する場合には、材料の仕入れのタイミングなどを含めてコントロールしながら法人化した方が節税になることがあります。
個人事業最後の消費税申告では、いつも以上に消費税が絡む箇所が多いので経理漏れに注意しましょう。
4.建設業の新設法人で注意すべき消費税とは(法人編)
株式会社や合同会社などの法人を設立すると2年間消費税がかからない(消費税免税)だと思っている方が多いです。
一般的には会社設立や開業してから2年間は消費税がかかりません。
しかし、一定の場合には消費税が1年目からかかるケースや2年目からかかるケースがあるので注意しましょう。
(法人設立から2年以内に消費税がかかるケース)
1.1年目から消費税がかかるケース
資本金1,000万円以上で登記をしてしまった
そんなことはないと思うかもしれませんが、建設業の許可を取ることを考えて500万円以上の資本金で事業を開始することがあります。
500万円以上でも問題はないのですが、せっかくなら1,000万円にしようと現物出資などを絡めて資本金を大きくして設立してしまうと1年目から消費税納税になることがあります。
これ以外にも親会社の影響などで設立1年目から消費税の納税が発生することもあるので注意しましょう。
2.2年目から消費税がかかるケース
2年目から消費税がかかるケースはよくあるので注意しましょう。
この規定に引っかかっていることを想定して税務調査が行われることも多いので注意が必要です。
法人設立後6ヶ月間の消費税の対象売上又は支払った給与が1,000万円を超えていると2年目から消費税がかかります。
(こんな場合に2年目から消費税納税になる)
・個人事業で雇用している従業員が多いケース
・個人事業で利益が大きかったケース(1,000万円以上の場合)
・個人事業で消費税を納税していたケース
6カ月間の支払人件費が大きいということは、従業員さんが多い場合には該当するリスクが高くなります。
さらに自分への給料(役員報酬)も人件費に含まれるので、該当リスクは上がってきます。
個人事業で消費税を納めている場合には、法人設立で消費税分の利益が残るわけですから役員報酬を高めに設定していることがあります。
役員報酬+従業員さんの支払給与が6カ月間で1,000万円を超えると2年目から消費税納税になるということを知っておきましょう。
事前に税理士さんに相談することで消費税のリスクなども検討しておくことをおすすめします。
5.建設業専門の税理士事務所に相談しよう
建設業については、建設業に強い税理士さんに相談することをお勧めします。
建設業なんて簡単だと思っていると大きな税金リスクを伴っていることが多いのです。
建設業は金額的にも大きな業種のため、経理や税金の仕組みを理解していなければ税務調査での追徴税額が大きくなる業種です。
資金需要も大きくなることがあるので、決算内容によって銀行融資への影響も出てきます。
建設業に強い税理士さんに相談することで経営を安定させていきましょう。