年末の大掃除で捨てるべきは、ホコリではない。利益の8割を奪う「下位20%の不良顧客」と、勇気ある「お別れ」の儀式

🗓️ 2025年12月3日
👨‍💼 千葉将志税理士事務所代表 千葉将志

【経営の断捨離】なぜ、売上を捨てると「利益」は増えるのか?
年末に決断すべき、会社を蝕む「モンスター顧客」とのお別れ儀式

重要度 ★★★★★
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この記事の要点

  • 「忙しいのに儲からない」原因は、利益の8割を奪う「下位20%の不良顧客」にリソースを割いているからです。
  • 「お客様は神様」という言葉は、社員を疲弊させ、会社の未来を奪う呪いになり得ます。
  • 勇気を持って「お取引を終了する」ことは、優良顧客と社員を守るための、経営者の最も重要な仕事です。

12月に入り、年末の大掃除の時期がやってきました。
オフィスの埃を払い、書類を整理するのは大切です。しかし、経営者には、もっと優先して「掃除」しなければならない場所があります。

それは、「顧客リスト」です。

「売上をくれるお客様を切るなんて、とんでもない!」と思われたかもしれません。
しかし、もしあなたの会社が「売上は上がっているのに、なぜか利益が残らない」「社員がいつも疲れていて、離職が止まらない」という状態なら、原因は間違いなく「受けてはいけない仕事」を受けていることにあります。

今日は、ピーター・ドラッカーが提唱した「廃棄の理論」と、パレートの法則(80:20の法則)を用いて、会社を劇的に高収益体質に変える「お別れの儀式」についてお話しします。

※本記事で紹介する事例は、実際に弊社が支援した複数のお客様のケースを基に再構成した物語です。プライバシー保護のため、人物・業種・数値等は加工していますが、課題の本質と解決策は事実に基づいています。

1. あなたの会社の「パレートの法則」を知っていますか?

イタリアの経済学者パレートが発見した「80:20の法則」は、中小企業の経営にも残酷なほど当てはまります。

  • 利益の80%は、上位20%の優良顧客が生み出している。
  • トラブル・クレームの80%は、下位20%の不良顧客が引き起こしている。

多くの経営者は、この「下位20%」のお客様に対しても、平等にサービスを提供しようとします。無理な納期、度重なる仕様変更、理不尽な値引き要求...。
その結果、社員の時間は奪われ、本当に大切にすべき「上位20%のお客様」へのサービスがおろそかになっているのです。

2. 「売上」には2種類ある。「良い売上」と「毒になる売上」

私たちは、売上を金額だけで判断してはいけません。「質」で判断する必要があります。

😇 良い売上

・適正価格で買ってくれる
・支払いがスムーズ
・社員に感謝してくれる
・紹介をくれる

➡ 会社の栄養になる

😈 毒になる売上

・常に値引きを要求する
・支払いが遅い、渋る
・社員を怒鳴る、下に見る
・手間ばかりかかり利益がない

➡ 会社の寿命を縮める

売上を捨てて、利益が増えるカラクリ

「毒になる売上(下位20%)」を勇気を持って断ると、一時的に売上高は下がります。
しかし、不思議なことに「最終利益」は増えることがほとんどです。

なぜなら、その仕事にかかっていた「膨大な見えないコスト(残業代、光熱費、修正対応、社員のストレス、退職コスト)」が消滅するからです。
空いた時間で、優良顧客へのサービスを手厚くすれば、そこから新たな紹介や単価アップが生まれ、V字回復が始まります。

3. 「お別れ」は社員への最高のボーナス

経営者が「あの理不尽な取引先とは、もう付き合わないことにした」と宣言したとき、社内に何が起きると思いますか?

社員は心の中でガッツポーズをし、「社長は私たちのことを守ってくれた」「この会社についていこう」と強く感じます。
これは、金銭的なボーナス以上に、エンゲージメント(帰属意識)を高める効果があります。

ドラッカーは言いました。「廃棄なくして創造なし」
新しい年を迎える前に、あなたの会社の未来を阻む「悪い縁」を手放す勇気を持ちましょう。

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投稿者プロフィール

千葉将志税理士事務所代表 千葉将志
千葉将志税理士事務所代表 千葉将志
中小企業社長専門の経営コンサルタント兼税理士。
1977年生まれ、札幌出身。大手税理士事務所在籍中、税理士試験に合格。「試算表を作るだけ」の業務が中心で、経営支援に踏み込めない現状に強いジレンマを抱える。大手事務所を退所し、コンサル型の税理士事務所に入所するも思い描く支援とのギャップに苦悩。28歳の頃にお客さんゼロ・計画なしという状態で独立を決意。自分自身が事務所経営に苦しんだ経験から「経営者は孤独で、悩んでも税理士に相談しにくい」という現実を身をもって痛感。ふとしたきっかけで参加した勉強会で「税理士=税金や会計処理だけではない。経営戦略まで踏み込んでサポートできる存在でありたい」という想いを強くする。様々な経験を経て、現在は北海道札幌市白石区で「建設業や動物病院をはじめ、多業種の経営者を「数字」と「現場」の両面で支えている。単価・売上・利益向上と財務、人事・採用マーケティングのサポートを得意とする経営コンサルタント。