この記事の要点
- 「忙しいのに儲からない」原因は、利益の8割を奪う「下位20%の不良顧客」にリソースを割いているからです。
- 「お客様は神様」という言葉は、社員を疲弊させ、会社の未来を奪う呪いになり得ます。
- 勇気を持って「お取引を終了する」ことは、優良顧客と社員を守るための、経営者の最も重要な仕事です。
12月に入り、年末の大掃除の時期がやってきました。
オフィスの埃を払い、書類を整理するのは大切です。しかし、経営者には、もっと優先して「掃除」しなければならない場所があります。
それは、「顧客リスト」です。
「売上をくれるお客様を切るなんて、とんでもない!」と思われたかもしれません。
しかし、もしあなたの会社が「売上は上がっているのに、なぜか利益が残らない」「社員がいつも疲れていて、離職が止まらない」という状態なら、原因は間違いなく「受けてはいけない仕事」を受けていることにあります。
今日は、ピーター・ドラッカーが提唱した「廃棄の理論」と、パレートの法則(80:20の法則)を用いて、会社を劇的に高収益体質に変える「お別れの儀式」についてお話しします。
1. あなたの会社の「パレートの法則」を知っていますか?
イタリアの経済学者パレートが発見した「80:20の法則」は、中小企業の経営にも残酷なほど当てはまります。
- 利益の80%は、上位20%の優良顧客が生み出している。
- トラブル・クレームの80%は、下位20%の不良顧客が引き起こしている。
多くの経営者は、この「下位20%」のお客様に対しても、平等にサービスを提供しようとします。無理な納期、度重なる仕様変更、理不尽な値引き要求...。
その結果、社員の時間は奪われ、本当に大切にすべき「上位20%のお客様」へのサービスがおろそかになっているのです。
2. 「売上」には2種類ある。「良い売上」と「毒になる売上」
私たちは、売上を金額だけで判断してはいけません。「質」で判断する必要があります。
・適正価格で買ってくれる
・支払いがスムーズ
・社員に感謝してくれる
・紹介をくれる
➡ 会社の栄養になる
・常に値引きを要求する
・支払いが遅い、渋る
・社員を怒鳴る、下に見る
・手間ばかりかかり利益がない
➡ 会社の寿命を縮める
「毒になる売上(下位20%)」を勇気を持って断ると、一時的に売上高は下がります。
しかし、不思議なことに「最終利益」は増えることがほとんどです。
なぜなら、その仕事にかかっていた「膨大な見えないコスト(残業代、光熱費、修正対応、社員のストレス、退職コスト)」が消滅するからです。
空いた時間で、優良顧客へのサービスを手厚くすれば、そこから新たな紹介や単価アップが生まれ、V字回復が始まります。
3. 「お別れ」は社員への最高のボーナス
経営者が「あの理不尽な取引先とは、もう付き合わないことにした」と宣言したとき、社内に何が起きると思いますか?
社員は心の中でガッツポーズをし、「社長は私たちのことを守ってくれた」「この会社についていこう」と強く感じます。
これは、金銭的なボーナス以上に、エンゲージメント(帰属意識)を高める効果があります。
ドラッカーは言いました。「廃棄なくして創造なし」。
新しい年を迎える前に、あなたの会社の未来を阻む「悪い縁」を手放す勇気を持ちましょう。









