修繕費と思っていたものが税務調査で認められないとは【資本的支出とは何か?】

札幌市白石区のMFクラウド会計・弥生会計専門の千葉税理士事務所です。飲食店・喫茶店・菓子製造販売業・理美容店・不動産賃貸業など幅広い業種で「知らない間に税務的な間違い」を抱えていることをご存知でしょうか?「修理しただけ」と思っているものが税務調査でトラブルに発展する工事になる理由を見ておきましょう。

修繕費と思っていたものが税務調査で認められないとは【資本的支出とは何か?】

アパートやマンションを賃貸ししている不動産賃貸業の場合には、頻繁に入退去が発生します。

毎年どこかの物件では入退去がでるために、壁紙の張替えやボイラー交換など様々な工事がおこなわれます。

飲食店や理美容業・ケーキ屋さんや喫茶店も定期的なリニューアル作業が行われる典型業種です。

5年から10年サイクルで大型リフォームをおこなわなければ競争力がなくなってくる業種です。

一般的な事務職や建設業よりもリニューアル工事や修繕工事の多い業種の場合、税務調査で「修繕工事」についてのトラブルが多いので注意しましょう。

飲食店・理美容業・喫茶店などの工事は工事金額も高額になるため、税務的なトラブルになると資金繰りにも大きく影響してきます。

事前に税理士さんに相談しながらしっかりと税務対策をおこなっておきたい部分です。

結論:リニューアル工事やリフォーム工事は経費で落ちないものが多い

【リフォーム工事などは税務的に2種類の工事に分けなければならないので注意!】

個人事業主の方や法人の経営者も「どうせ工事をするならまとめてやってしまおう」と「リニューアル工事」をする方が多いのが税務調査でのトラブルの原因になっています。

これはリニューアル税務的には工事を「次の2つのもの」に分けて考えなければならないのです。

①修繕費として一発の経費で落ちる工事

⇒税務的に大きな問題にならない工事

②資本的支出として一発の経費で落としてはいけない工事

⇒何年もかけて減価償却をしていく工事として管理

一般的な個人事業主の方や会社設立で法人化したばかりの経営者の方には「なにいってんの?」と思ってしまうことをお話ししなければなりません。

個人税務でも法人税務でも「修理に該当しない工事したものは何年かかけて減価償却をする」ということになります。

穴が開いたり壊れたりしたものは「修理」しなければ使えないので、修繕費として一発の経費で落としていきます。

リニューアル工事など、「モノが良くなった工事」は修理ではないと考えられてしまいます。

そのため「モノが良くなった工事」のことを税務上「資本的支出」とよび、修繕工事と別に管理をしていきます。

資本的支出は減価償却をしていく工事として経理をしなくてはならないのです。

仮に500万円の工事をした場合を例に考えてみましょう。

①その年に工事をするのでお金が500万円なくなる

②この工事によって数年~数十年はそのリフォームした部分を使い続けられる

⇒モノが良くなった工事部分は「資本的支出」として減価償却が必要になる

「資本的支出」は経営上問題になる【資金繰り悪化につながるので注意】

会社のお金の流れと税務上の経費が一致しないため、会社の資金繰りに影響が出てしまうのです。

①お金が出ていても、その年の経費で全部が落ちない

②経費で落ちないため「お金がないのに」税金がでる

資本的支出とは何か?【一発経費で落ちない工事・修理部分】

個人事業主の人や法人が工事や修理というものをした場合に、その内容によって一部が修繕費・一部が資本的支出に分かれるケースが多くなります。

実際にお客様の工事や修理明細を見ていくと「全部が経費で落ちるものが少ない」と感じることも多いのです。

工事や修理の振込金額が100万円となっていても、工事明細や修理明細を見ていくと「この100万円の中身を区分して経理する必要がある」ということになります。

簡単にいうと、資本的支出と修繕費の違いは次のようになります。

①修繕費は修理に必要なもの

②資本的支出はモノが良くなったもの

同じ工事の中で修繕費と資本的支出が混在してしまうので、会社側でしっかりと区分する必要があるので税務調査でトラブルになってしまうのです。

資本的支出に該当した場合には、その本体(建物や機械など)の耐用年数で減価償却をしていくことになります。

そのためお金がでたタイミングよりも、経費で落ちる部分が小さくなってしまうのです。

①わかりやすい資本的支出は具体例で示されている

・建物の避難階段の取り付けなど物理的に付加した部分の金額(ものが増えた)

・用途変更のための模様替え等の改造又は階層に直接要した金額(用途を変えるためのアレンジ)

※これらに該当した場合には、支出金額にかかわらず資本的支出として経理していきます。

・機械の部品などを特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合は要注意!

建設機械などに多い例ですが、部品の取替えなどをおこなっていて最新の部品に取り換えているケースは注意が必要です。

A:(修繕費として一発経費OKな部分)

・その取替えに要した金額のうち通常の取替えに要すると認められる金額

B:(資本的支出として減価償却する部分)

・A以外の部分(通常の取替えを超える部分は資本的支出)

②資本的支出と修繕費が具体例に当てはまらない場合(ほとんどはこのケース)

実務上はほとんどがこちらになります。

同じ工事の中で様々な部分を修理・改修しているのです。

金額が「20万円未満」か「3年以内の周期」は修繕費

(法基通7-8-3)(所基通37-12)

判定①:工事や修理が20万円未満の場合⇒修繕費

判定②:工事や修理が3年以内の周期で行われている実績等がある⇒修繕費

少額なものや短期間・定期的に行われるものは修繕費として経理することが認められています。

しかし、飲食店や喫茶店・理美容業などのリニューアルは3年に1度ということは少ないことと、実質的に「モノがよくなっている」ことが多いので複雑な判断をしていくことになります。

工事の内容を細かく見て「資本的支出に明らかに該当する部分を除いて」次の判定をかけていきます。

(法基通7-8-4)(所基通37-13)

判定③:金額が60万円未満の場合⇒修繕費

判定④:前年度末(個人事業主の場合は前年12月31日)の取得価額×10%相当額以下⇒修繕費部分

 工事や修理費用が60万円以上になっていて、かつ、前期末取得価額の10%よりも高額な場合があります。

その場合上記の計算式では修繕費部分がでてきません。

上記でも判定ができない場合には、継続要件が必要ですが次の方法により修繕費を計算することができます。

(法基通7-8-5)(所基通37-14)

判定⑤:判定③・判定④を使わない場合の特例⇒継続適用が要件

A:資本的支出と修繕費の区分が不明な金額×30%

B:固定資産の前期末取得価額×10%

AとBの少ない金額を「修繕費」とすることができる。

まとめ

飲食店・理美容店・動物病院・喫茶店・ケーキ屋やさん・パン屋さんなどリニューアルが多い業種の場合には修繕費として落としてはいけないものがたくさんあります。

自分で経理をしている場合には、このような税務的な細かい取り扱いを知らないまま修繕費として処理をしている方も多くいらっしゃいます。

修繕費の金額が高額になると税務署側としても「目立つ間違い」ということになるので問合せや税務調査ということになってきます。

自分で確定申告や法人決算をする場合には注意しましょう。

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