法人決算で重要なことは「経費になるもの」と「経費にならないもの」を知っておくことです。特に起業したての経営者が起こしやすい影響の大きな間違いに在庫と資金繰りの関係をまとめてみました。
法人決算対策で失敗しないために:在庫になるものを仕入れすぎない
弥生会計・MFクラウド会計専門の札幌市白石区の千葉税理士事務所です。
法人の決算対策で重要なポイントはいくつもありますが、共通していることがあります。
法人決算対策の一般的なものは、次のことが重要です。
①法人税の節税をすること
②消費税の節税をすること
③会社の資金繰りを安定させること
法人決算対策というと、節税・節税と考えてしまいますが一番重要なことは会社の資金繰りです。
法人は赤字ではつぶれません。
会社がつぶれる理由は「資金ショート」です。
節税をしたい理由は利益が多すぎると運転資金が納税で減りすぎてしまうからです。
利益が1,000万円で法人税率が30%とすると、法人税は300万円になります。
適正な納税は必要ですが、会社が成長するために必要な将来への投資する資金を納税に回してしまっては会社が成長できません。
そこで会社の成長を考えた節税対策と適正な納税のバランスを考えていく必要があるのです。
法人の利益と資金繰りの関係をみてみよう
なぜ法人の節税と資金繰りの管理が難しいかを具体的にみていきましょう。
①法人の利益1,000万円
②法人税率 30%
③法人税 1,000万円×30%=300万円
①~③でわかることは、「法人税が出る仕組みは、利益があれば納税額が大きくなる」ということです。
会社の利益=「入金-支払い」であれば、全く問題ありません。
ところが利益の計算は入金と支払いではありません。
利益=収益-費用
入金と出金ではなく、収益の発生と費用の発生で利益が決まるのです。
ここで重要なことがあります。
入金の種類は次の3つしかありません。
①売上の入金(収益に対応する入金)
②銀行融資などの借入金の入金
③増資による出資の入金
支払いの種類は主に3つです。
①経費の支払い
②銀行融資などの借入金の返済
③経費にならない支払い
法人を運営していく中でほとんどの入金が売上の入金です。
そのため預金が増えているのであれば利益がある可能性が高いといえるわけです。
問題は支払いのほうです。
法人が支払うものの中には、経費にならない支払いの割合が高いのです。
③の「経費にならない支払い」には、次のものがあります。
a:減価償却をしなければ経費にならない30万円を超える固定資産の購入
b:経費で落とせない契約形態の生命保険など(半損・全額資産計上の保険)
c:在庫(棚卸資産)で未販売のもの
法人の活動の中で、経費にならない支払いが非常に多いのです。
法人の入金のほとんどが利益に結び付く入金に対して、支払いの方は経費にならないものが多いのです。
しかも、大きな支払いのものほど経費で落ちないという悪循環が生まれてしまうのです。
非常に難しいものは、将来的に経費になるにもかかわらず購入しただけでは経費にならない「棚卸資産」です。
これは勘違いが非常に多く、間違った節税対策として「やってしまった」経営者も多いはずです。
在庫は必ずと言っていいほど税務調査でチェックされるので「やってしまった」では済まない間違い節税なのです。
支払いが多くて現預金が少なくなっていても、利益が小さいとはいえないのです。
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経費にならない「棚卸資産とは」どんなもの?
棚卸資産とは「在庫」のことです。
税法上は次のものが棚卸資産と定められています。
(1) 商品又は製品(副産物及び作業くずを含む。)
(2) 半製品
(3) 仕掛品(半成工事を含む。)
(4) 主要原材料
(5) 補助原材料
(6) 消耗品で貯蔵中のもの
こうみると範囲が広く見えます。
材料や商品は棚卸資産になると覚えておきましょう。
難しいいいかたをすると、商品や材料などは「売れたら経費になる」という仕組みなのです。
売上に対応する部分が「売上原価」として経費になるという作りなのです。
そのため、残っている在庫は「棚卸資産」という名前の資産になってしまうのです。
ところが通常「棚卸資産」になるものは、期中では「仕入」として経費処理されているものです。
経営者の感覚としては、代金を支払ったときには「経費の支払い」と認識している可能性が高いのです。
そのため、決算期に利益がでそうになると「商品を仕入れておけば節税になったうえに来期売って回収できる」と感じてしまうのです。
ここだけみると無駄な経費ではなくて、来期には資金回収できる確実な投資に見えます。
ところが、売れ残っている在庫は「棚卸資産」に該当するため、経費で落としてはいけないのです。
ここで節税したはずが「失敗節税」になってしまうのです。
大きな設備投資であれば銀行融資をうけたり、リース契約にしていたりするので分割払いになります。
ところが「仕入」は通常の支払いサイトでおこなっていきます。
節税して納税額を抑えるためにたくさん仕入れたわけですが、経費で落ちないため利益が残ってしまいます。
利益が残っているにもかかわらず、納税期日前に在庫の支払い期日が来てしまいます。
失敗節税になることで「納税資金の用意+得意先への仕入れ代金の支払い」が起きてしまいます。
建設業や製造業は特に注意が必要です。
建設業や製造業は引き渡しが終わっていない現場にかかっている経費は在庫になります。
これは棚卸資産のなかの「仕掛品(半成工事を含む)」の部分に書いてあるのです。
建設業や製造業の在庫管理が難しいのは、仕掛品には材料代だけではなく人件費や外注費というものも含まれるのです。
引き渡しが終わっていない現場にかかった材料費・人件費・材料費などをしっかりと集計して「棚卸資産」として経理していなければ「在庫漏れ」として修正申告が必要になってきます。
仕入れと棚卸資産の関係は税務調査でも必ずチェックされる
税務調査では必ず在庫の管理方法と決算時の在庫計上の根拠を調べられます。
期中は材料や商品の仕入れを経費で落としているからです。
期末でしっかりと棚卸資産として経費から資産に振り替えていなければ「経費で落としっぱなし」になっているためです。
そこで期末の在庫の数え方や納品書・請求書をチェックして在庫に間違いがないかを確認されます。
先ほどお話しした通り、建設業や製造業の場合には納品書だけではなく作業日報などもチェックして人件費の在庫計上額が適正に行われているかも確認されるわけです。
決算日に倉庫の在庫をすべて数えて棚卸資産に計上していても、得意先に預けっぱなしの在庫や現場に直送している在庫など漏れやすいものもあるので注意しましょう。
この点もしっかりと税務調査では確認されていきます。
まとめ
法人の支払っているものの中には経費で落ちない支払いが多いので注意しましょう。
まだ使っていない材料や在庫商品は経費で落ちないので期末に買いすぎないようにしましょう。
税金対策をしようと思う場合には「経費になるもの」と「経費にならないもの」を分けて考えていきましょう。
節税対策で重要なことは資金繰りと納税資金の確保ということを忘れずに対策をしましょう。
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