札幌市白石区の経営に強い千葉税理士事務所です。
今回はインボイスの精度の特性から売上1億弱の会社の税務調査リスクとその対策をお話しします。
(目次)
1.なぜ売上1億円弱の会社が税務調査に当たりやすくなる可能性があるのか
2.税務調査の対策とは
3.結局は売上と利益を増やしてお金を増やした方が得
1.なぜ売上1億円弱の会社が税務調査に当たりやすくなる可能性があるのか
インボイス制度が始まって大混乱の様相を呈していますが、みなさまの会社はいかがでしょう?
私たちは日々「これってどうなんですか?」や「この領収書ではダメなんです」やらで仕事が増えた感じがしております。
インボイスはTVでの情報発信から主戦場が経営者界隈に変わって大混戦です。
そこで、かつては売上1千万円弱の事業者が税務調査に当たりやすいといわれていましたが、インボイスで1億円のラインも危険なのではないかと思ったのでまとめてみます。
それは、インボイス制度を始めた時にこんなことを国税庁が出したからです。
少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置の概要)
1 少額(税込1万円未満)の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくとも一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除ができます。これは取引先がインボイス発行事業者であるかどうかは関係なく、免税事業者であっても同様です(28改正法附則53の2、30改正令附則24の2)。
※ 少額特例は、少額(税込1万円未満)の課税仕入れについて、インボイスの保存を不要とするものであり、インボイス発行事業者の交付義務が免除されているわけではありませんので、インボイス発行事業者は課税事業者からインボイスを求められた場合には交付する必要があります。
2 基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者が、適用対象者となります。
特定期間における課税売上高については、納税義務の判定における場合と異なり、課税売上高に代えて給与支払額の合計額による判定はできません。(注1) 「基準期間」とは、個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度のことをいいます。
(注2) 「特定期間」とは、個人事業者については前年1月から6月までの期間をいい、法人については前事業年度の開始の日以後6月の期間をいいます。
3 少額特例は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期間が適用対象期間となります。
(注) 令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に行う課税仕入れが適用対象となりますので、たとえ課税期間の途中であっても令和11年10月1日以後に行う課税仕入れについては、少額特例の対象とはなりませんので、仕入税額控除を受けるためには、原則として、インボイスと一定の事項を記載した帳簿の保存が必要となります。
国税庁HPに色付け・太字にした加工をしております。(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/02.htm)
なにをいっているのかというと、インボイスの交付が受けられなくても消費税の仕入れ税額控除ができるものがあるという制度です。
要件は
①自社の前々期課税売上高が1億円以下
②税込み1万円未満の取引であること
これを満たすと、免税事業者との取引だとしても消費税の対象取引であれば今まで通りの処理で100%消費税を引けるということになります。
裏を返すと前々期の課税売上の会社は金額にかかわらず、インボイスが出ない場合、次のようになります。
●免税事業者との取引の場合→80%だけ消費税が引ける
※2026年(令和8年)10月からは50%だけ消費税が引けるに変更
めちゃくちゃ影響があるこの制度
税込み1万円未満の取引であれば、今まで通り帳簿の処理をするだけで消費税が引けるというのはかなり強力な節税になっています。
飲食代やガソリン代・amazonや楽天での購入など税込み1万円未満の会計になる取引は相当多いです。
実際に皆さんの会社の会計ソフトで1万円未満の取引を検索すると相当な量出てくるはずです。
これがインボイスかどうかを考えないで消費税を引ける処理ができているわけです。
この消費税100%ひける権利が80%しか引けない制度になるのが、前々期1億円超の会社になるわけです。
ということは、税務署はその会社の売上の期間ずれや売上漏れを見つけて1億円超にできれば自動的に消費税も追徴できるということになります。
どうですか?
この1億円ラインがいかに危険な領域になるかお分かりいただけると思います。
通常の税務調査であれば売上のずれや抜けの分だけの話ですが、その後の消費税にものすごい額の影響を及ぼす可能性があるのです。
令和8年10月からは50%しか消費税引けなくなるのですから、もっと影響がでてきますよね。
だから、1億円弱の会社は税務調査の重点に選ばれてもおかしくないわけです。
2.税務調査の対策とは
特に注意が必要な業種は建設業です。
建設業は工事の単価が高いため、現場の売上の計上時期を間違うだけで数百万・数千万の売上ずれが起こります。
特に北海道は建設業の数が多いこともあって、体感値としては建設業の税務調査が多いです。
さらに、今回のインボイスの少額特例も相まって税務調査したい業種になってもおかしくありません。
売上の計上時期を請求書を出したときと思っている会社はほぼ税務調査で修正申告を求められます。
しっかりと、売上の計上基準を考えて売上を作っていくことが重要になります。
万が一税務調査でインボイスの少額特例が使えなくなったとしてもダメージが少なくなるように日ごろからインボイスの交付を心がけることも重要になります。
3.結局は売上と利益を増やしてお金を増やした方が得
インボイスの少額特例は節税になるのですが、結局はお金が増える方向で経営をしていかなければなりません。
なぜならインボイスの少額特例も時限的な措置という扱いになっているからです。
しかも、将来にわたって消費税が安くなる可能性は高いように思えないので、節税に力をいれても得られるメリットがずっと続くわけではないからです。
会社の経営としては売上・利益をどうやって増やしていけるかを考えていくほうが再現可能性のある経営改善につながります。
では、どうやって売上・利益を増やすのかも考えてみましょう。
①身近なビジネスパートナーの税理士さんに相談してみる
②自社の財務について見直してみる
③マーケティングを含めて売上を上げる方法を検討する
税理士さんの中には税金だけという方と経営的な勉強をしている方とに分かれます。
まずは、ご自身と仲の良い税理士さんに「売上を増やしたい」ということを相談してみましょう。
赤字の会社の場合、「赤字は仕方ないですよね…」という税理士さんと「売上を増やしましょう」という税理士さんと「削れる経費ないですか?」という税理士さんに分かれます。
経営的に前向きなのは「売上を増やしましょう」という税理士さんです。
売上・利益を増やせれば赤字ではなくなりますし、会社のお金も増えます。
この売上アップには会社の財務確認も欠かせません。
売上アップをすることで黒字倒産にならないように会社の体力を確認する必要があります。
あとは、マーケティングを含めて「売上のあげ方」ということになります。
今後の会社経営は今まで以上にこの売上アップ・利益アップということを考えて実行する会社とそうでない会社との差は開きます。
なぜなら、右肩上がりの経済ではなく、人口を含めて減少していく環境下で競争をしていくからです。
もしも、経営的な部分も考えていきたいという方は是非ご相談ください。
相談電話:011-858-7007